久しぶりの我が家。
兵団から長いこと帰れていなかった。
あなたには私よりも優先することがあるでしょう?気にしないでください。女って寂しくても意外と平気だったりしますから。
それなりの音を立てて開けてしまったドアだが何の反応もなし。いない筈は。

「レイ、」

いた。気持ち良さそうにソファで寝ている。昔から好きだという編み物が途中のまま傍らに置いてある。窓から風が入り込んできてそれは寝たくもなるだろう。家は相変わらず塵一つない程に綺麗だった。

「…」

自分のジャケットを掛けてやり側にしゃがんで寝顔を見つめる。寂しくても意外と平気だったりしますから、か。それでも家を出る時に見送ってくれる笑顔はいつも泣きそうな顔で。

「ごめんな」

どうにも出来ないのが一番つらい。
起こすことも出来る。けれどたまには起きるまで寝顔を見ていよう。柔らかい頬。前に俺の気が済むまでツンツンと突いていたら私は子供じゃないんだからやめてと怒られた。

「…あ、れ…?」
「レイ」
「リ、ヴァイ…?あ…ご、ごめんなさい…っ!うっかり寝ちゃってて…」

軽く両手を広げたら腕の中に飛び込んでくる恋人。抱き締められる強さですぐ分かる。平気なわけねぇよな、寂しかったよな。

「会いたかった…」

そうか、俺だってそうか。
こんなにもレイを強く抱き締めていて俺も心底会いたくて仕方なかったのか。
緊張の糸が全て切れる。やっと会えた。

「…ただいまの」
「ふふっ、キスね。おかえりなさい」

No.15 愛しい人

ありふれた行為も、愛によるなら美しい。
パーシー・ビッシュ・シェリー

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