俺とレイのルール。
それは『風呂の時は何もしない』こと。
正しくは『風呂の時は何もしてくるな』
「ふふっ、今日の入浴剤いい香りでしょ?」
香りなんざ知らねぇ。タオル身体に巻いて濡れた髪を高く纏めて、ほぼ裸の状態のレイが湯船で向かいにいるという最高のシチュエーションなのに手を出してはいけない。
拷問にも程がある。
「あ〜〜〜!」
「更に悪人面になってる…」
「お前がこんなルール作るからだろ!?」
「ジャンがいけないんでしょ」
「ぐ」
原因は何を隠そう俺。
初めて一緒に入った時にそれはもう勝手にエキサイト。自分でも分からなくなる程に攻めて攻めて攻めまくった。気付いたらレイはぐったりと気を失っていて…というわけで『お風呂は入るものでエッチはしたくない』となり今に至る。
「…悪かったって」
「反省してない目」
「してるっての!だからもう少しこっち来てください」
「やだ」
「レイ、ホント頼む」
パンッ!両手を合わせて懇願された。
ジャンが物凄くしょぼくれてる。
そ、そこまでしなくてもいいと思うんだけどな。これじゃ何だか私のせいみたいで少し複雑な気持ちに。それでも、すすっと近付いて抱き締めてみた。
「もう…これでいい?」
大きな腕でギュッてされる。
「ん」
私の肩に顔を埋めててどんな顔してるかは見えない。
「やっぱりしたいの?」
「当たり前だバカ」
「ルール」
「…」
「でも…出たら好きにしていいよ?」
「今すぐ出るぞ」
結局いつもこう。
お風呂から出た先にいるのは、きっと悪人面のおおかみさん。
No.21 ふたりのルール