「疲れた…」

上官のレイさんがソファに腰掛ける。
はぁと長い溜息が聞こえてからはピクリとも動かない。大丈夫ですか?無理しないでください。くらいしか言えない。新兵の俺が到底立ち入れる内容ではないからだ。

彼女は職務中ほとんど笑わないし喋らない。真面目にコツコツと。かと言って周りから怖がられてるわけでもなく相応に優しい。ただそれはあくまで『上官』の時の姿。

「ジャン」
「は、はい!」

名前を呼ばれ大慌てで移動。座ってと言われたので恐る恐る隣に。これは説教だ。やらかしたかもしれない事は…以外と思い付く。と巡らせていたら抱き着かれた。

「ちょ、へ!?あの、」
「…特に頑張った」

だからぎゅーってしてください。
恥ずかしそうな顔がこちらを見てきた。
不覚にも可愛いと思いながら宙に浮いていた両手をレイさんの背中にぎこちなく回す。

「ごめんね急に」
「ぜ、全然大丈夫です!」
「…頭撫でてもいいよ?」
「えーっ、と…もしかして…甘えてます?」
「…うん」

可愛い。
そっと頭を撫でてみたら抱き着いたまま再び動かなくなってしまった。も、もしかしてこう撫でられるのは嫌いだったとか?

「そうじゃなくてね、嬉しいの」
「嬉しい?」
「ジャンのこと独り占めしてる」
「あ、」
「もっと…甘えてもいい?」

恐らく恋人同士になって初めてであろうレイさんからの我侭。断る理由はない。俺があなたに出来ることであれば何でも言ってくださいと返した。

「幹部会議代わりに出てください」
「え!?」
「嘘、お姫様抱っこ」
「そ…それなら全然」
「嘘」
「嘘!?」
「ずっと一緒にいて?」

不意打ち。
あーもう、クソ。可愛い。
心臓にも下半身にも悪いわ。

No.22 甘える

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