「レイ」
「そのまま作業してていいよ」
「チッ」
「…よし!出来た」

視界がどことなく開けた感じがする。
鏡で見てみてよ、可愛いから。
そこに映っていたのは前髪をゴムで結び上げられた俺。お世辞でも可愛くない。ハンジにでも見られてみろ、一生笑われる。

「…おい」
「報告書の作成終わったから暇で。ふふっ、嫌なら取ってもいいのに」
「…」

うるせぇ黙れ。
髪をそのままに書類にペンを走らせる。他のヤツがしたってんなら今頃三途の川辺りを渡らせてるが、まぁ…レイなら呆れはあるものの怒る気はしない。

「ねぇリヴァイ」
「ん?」
「どうしてそんなに優しいの?」
「さぁ…どうしてだろうな」
「そうだ!」

唐突に前髪のゴムが外される。
細く長い指が俺の髪の毛を…なんだ?取り分けてる?何分後ろに目があるわけじゃないから分からない。

「今度は何してる」
「小さい三つ編みたくさん作ろっかなって」
「みつあみ」
「うん、絶対可愛いから」

そんなわけあるか。一刀両断な言葉が放たれるも、結局好きにしろの一言でいつも受け入れてくれる。髪の毛短いから時折引っ張っちゃって『痛い』と言われても溜息1つして許してくれる。

「特権だね」
「あぁ、存分に喜べよ」

人類最強の髪の毛に触れるのは私だけ。

No.16 恋人の特権

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