「紅茶淹れますね」
「頼む。此処は空気が綺麗でいい」
「調査兵団も綺麗だと…思いますけど?」
「外観だけで中身は埃まみれだ、アイツ等の掃除力の低さには呆れる」

調査兵団を出て壁内を少し歩いた場所にある小さな家。整理整頓され澄んだ空気が満ちている。そこに恋人のレイは住んでいた。出会ったきっかけは行きつけの紅茶店でレイが働いていたから。

「どうぞ」

久しぶりのこの紅茶。
さすが淹れ方が分かってる、美味い。
兵団じゃ誰が淹れてもクソな味になると愚痴を零す。異性との話しは苦手でもないが得意でもない。それでもレイは楽しそうに話を聞いてくれる。この笑顔は俺の大切な宝物。
そして今日は大切な日。

「記念日だな」
「は、はいっ!そう…ですね」
「欲しい物とか行きたい場所があれば言っていいぞ。お前にはいつも寂しい思いさせてるから、?」

カップを持ってない投げ出されていた手がそっと両手で包まれた。小さくてあたたかい手に。

「私は…会えるだけで幸せ」

物も要らない。行きたい場所もない。

「これからもあなたが生きて此処に来てさえくれればそれだけで十分です」
「…」
「ふふっ、やっぱり1ついいですか?」
「レイ?」

キスしてください。
余りにも小さな頼み事で笑ってしまう。
これだから好きなんだ。

「っお前…」
「も、もう!どうして笑うんですか…っ」
「ガキじゃねぇんだ、他に色々あるだろ?」

例えば、

No.7 記念日

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