金に物を言わせた装飾の数々、煌びやかな雰囲気から尊敬する凄さというものは一切感じられない。虚勢にも似た栄華を感じているのはこちら側にいる自分達だけだろう。

「レイ・ローゼンハイム兵士長」

この場に来てから多くの貴族と一通り話し終えた後の小さな休息。といってもグラスの中の酒を1口飲むだけでまた群がってくる。今日も変わらずお綺麗で。毎回こうして話し掛けてくる男は主催者の息子だった。

「この傷は…」

会釈で返すと男はレイの頬に付いた傷を手のひらで撫でた。

「…壁外調査ですか」
「すぐに消えますから」
「やはりあなたは調査兵団を退団すべきだ」

話してる間も撫でる手のひらは止まらず指先で掬われた髪の毛がサラリと落ちていく。相手の気持ちを考えることなく自分本意のままに無神経剥き出しの言葉を言いまくる。貴族のこの神経が理解出来ないとリヴァイが言っていたがその時どう返したかレイは覚えていなかった。

「兵士長ではなく1人の女性として生きて欲しいんですよ、私と」
「有難いお話ではあります」
「エルヴィン団長も優れた方ですが…いつ危険な任務を任せるか分かったものではない」
「覚悟の上です」

グラスに視線を落とした。
宝石のような色をした液体が揺れる。
いつかその通りになったとしても逆らう事なく従います、最期まで。彼が間違った判断を下すことはないですから。

「その信頼関係が崩れる事は?」
「ありません」
「…なら気が変わるまで待ちましょう。そろそろお帰りの時間みたいですしね」

(自分本意の無神経)

「そういえば、補佐官は元気にしていらっしゃいますか?」

見ればエルヴィン達が入口辺りに立っていた。これだけ長い時間いたのに何も感じなかったパーティー。最後に会釈をもう一度してから去ろうとしたが男の言葉にレイの足は止まる。

「数年前の壁外調査で戦死しました」
「おやおやそれは…特例の新兵といえども死ぬ時は一瞬と来たものだ」
「…」
「狼の様にがさつで知性の無さそうな少女でしたからね、」

その時会場がざわつく。
スーツのネクタイを引き寄せレイが男に口付けていた。軽いキスから始まり段々と深くなっていくそれに周りは彼女から感じる人形みたいな美しさにただ魅入る事しか出来ない。やがて互いの唇が離れ彼女が男に何かを囁く。そしてグラスをテーブルに置くと振り返る事無く去っていった。

貴族の犬と遊んでる暇はないの。

次ウィユの事をそう言ってみて?
「殺すから」


*


真っ暗な調査兵団の廊下を脱いだジャケット片手に壁に手を付きながら歩く。身体が重くて熱く、思考がぼんやりと曖昧。そんなに酒を飲んだ記憶はないのに見事に酔ってしまったらしい。

「っはぁ…」

あと少し。部屋に着いたのに酔いから来る疲労でドアノブに手を掛けられない。いっそこの場で寝てしまおうか。倒れそうになるも誰かが身体を支えてくれた。

「レイ兵士長…っ!大丈夫、ですか?」

一歩手前で抱き起こした身体は熱く全体重がこちらにかかって来た。酔ってる様に見える。兵士長の部屋はここだから…とりあえず寝かせた方がいいよな。失礼します、とひと声かけてから抱き上げた。驚く程に軽い。中へと入りベッドに寝かせると水差しとグラスを探し始める。

「水でも飲みま、!」

いつの間にか身体を起こし座っていた彼女は、熱いと呟きながら兵服を脱ぎ下着になっていた。柔らかそうな胸元。無防備に出された生足、気怠さを強く纏った目付き。少し飲みたいという声でさえ消えてしまいそうなくらいに意思がない。グラスを手渡す。

「…ど、どうぞ…」
「…ありがとう」

手付きが怪しいのか飲みながらも僅かに唇の端から水がこぼれて濡れていく素肌。触れたかったものが今、俺の目の前にあった。

我慢、できそうもない。

「ふ、ぅあ…んっ…ぁ…」

両肩を押さえ付け押し倒す。レイ兵士長の上に覆い被さりキスしてみた。舌を捩じ込ませればゆっくりとした動きで絡んでくる舌、互いの唾液が混ざり合って媚薬でも流れ込んでくる様な。

下着を無理矢理に外し胸元に顔を埋めた。手で揉んでも優しく押し返してくる。乳首を口に含むと彼女から吐息が漏れ心臓がドクンと音を立てて鳴った。

「あ、ぁ…っ…それやったら、っだめ…」
「本当に…?」
「っいゃ、下…ぬれちゃ…う…」
「もうすごい濡れてますよ、兵士長の中」
「や…っ、ぁ、んぅ…っ!」

秘部に入れた指を抜いて愛液を舐める。
ダメなのは俺の方だ。
今すぐ挿れたい。挿れてそれで。
理性が、積み木崩し。

「ぁ、いゃ…!あぁっ!んっ、ん…!」
「声出したらみんな起きちゃいますから」

抱き着いてくる腕にだって噛み付きたいくらいに。気付けば彼女の口元を手のひらで塞ぎ無我夢中で腰を打ち付けていた。



*


「っやべ…」

余りに気持ち良くておかしくなる。
最中に自分が誰か分かるかと聞いてみたが相当酔っていたらしく喘ぎによって答えは得られなかった。全身を拭き終えた細い身体を見てるとまた色々と興奮してしまいそうだったので布団を掛ける。

「…あなたは…      」

たった今リヴァイ兵長の命令に背いた。
あぁそれよりも高揚感の方が強い。
部屋に戻る際に伏せられた目元に口づける。
そんなレイ兵士長は人間みたいに綺麗だった。

- ナノ -