「…これは…」
前日は晴れながらにして物凄く風が強かった。翌朝の外は例えるなら嵐の後の静けさ。だからそれのせいに出来るとその時は思っていた。
*
「うぉぉ…!私の…私の…っ!」
レイは大学の後輩。
特に懐かれるような事は何1つしてないが紅茶好きというので気が合いよく一緒にいる。あとはアパートの部屋が真上。そして現在は大学の食堂で呻いていた。
「あぁ…やっぱり警察なのかな…」
「警察?どうした」
「ねぇ聞いてくれますか?助けてください本当に助けてあの店の紅茶奢りますから」
「聞いてやるから落ち着け、で?」
私のパンツが盗まれたんです。2階なのに。
「ぶふぉ…っ!!」
「リ、リヴァイ先輩!?とうとう気管もお歳を召されて…!」
「テメェ…ぶっ飛ばすぞ…!…盗まれたのか」
「はい…!」
「……そうか」
盗まれたと言われてるレイのパンツ。実は俺の家にある。朝起きてカーテン開けたらベランダに落ちていたからだ。さすがにそのまま放置しておいたらこっちが周りから何を思われるか分かったもんじゃない。
だが、事態は想像以上に変な方向に行きかけていた。でもこの状況で言えるか?何食わぬ顔で『そのパンツは俺が持ってる、そもそも外なんかに干してんじゃねぇ馬鹿か』と。
誰がどう聞いたって犯罪者だ。
いや…サラッと言っちまえば…
「レイ、「ミカサ達に相談したら…そういう変態は常習性あるからまた盗まれる前に警察に言った方がいいって」
「おい」
勝手に『大学の先輩』から『常習性のある変態』に格上げされそうになっている。
「先輩…どうしたらいいですか…?」
ふざけんな俺が聞きてぇよ。
たかがパンツ、されどパンツ。
どう伝えればいいのか。卒論より骨が折れる作業になりそうなのは確かだった。
No.12 不安げな瞳