膨大な書類の処理をしているレイは俺が席を立ち背後に移動しても全く気付いていない。それほど集中していた。長い黒髪。男の俺とは違って艶めいている。

「…リヴァイ?何してるの?」
「お前の髪を触ってる」
「そうなんだろうけど…」

強いて言えば理由はない。
指を通すと重力に逆らうことなくサラサラと流れていく。それでいて柔らかい。もう一度通しても同じだった。

「綺麗な髪だな」
「ありがとう」
「何かしてるのか?」
「特には、普通に梳かしてるだけだよ」

これで。兵服から取り出した小さな櫛。貸してもらいそれで梳かしてみたら指よりも滑らかに髪が動いた。

「ほう」
「ふふ、なに?面白かった?」
「俺が梳かしてやる」
「じゃあ…お願いしようかな」

早速髪の束にして取り櫛を通す。これだけ綺麗な髪だからそんなに梳かす必要は無いと思うがレイに頼まれた以上はやる。

「動くな」
「書類取るだけだから無茶言わないで」
「まだ終わんねぇのかよ」
「んー…夕方まで掛かるかも」
「終わるまでいてやろうか?」

おい、その驚いた顔は何だ。本当にどうしたの?今日はすこぶる優しいね。いつだってお前には優しいだろうが。うん、そうだった。ありがとうリヴァイ。
髪が綺麗。恋人の自慢出来る要素をまた1つ見つけられた新鮮な日。

No.6 気まぐれ

- ナノ -