「迎えに来てくれてありがとう」
「どういたしまして」

夕方の駅はたくさんの人々で騒がしい。
レイは事前に聞いていた通りの車を見つけるとそれに乗り込む。ひと目で分かる黒の高級車。運転席ではミケが窓を開け煙草を吸っていた。シートベルトを確認して車を出す。

「煙草吸うんだ」
「20歳はとうに過ぎてるからな」

咥えた煙草の煙が外へと流れる。
式場で会った時とはまた雰囲気が違う学校帰りの制服姿。吸い終えた吸殻を灰皿に入れたが換気の為にしばらく窓は開けたまま。そうしないとにおいが残ると弟がうるさいので。

「この車はお兄ちゃんの?」
「あぁ、リヴァイも使ってるが」
「そっか。あ、通ってる学校だよ」

タイミング良く赤信号で止まったので身を屈めてレイと同じ場所を見た。近代的な造りをした学校。如何にも私立を感じさせる。それより本当に家の近くだな。

「此処から近いって言ってたよね?」
「もう着くぞ」

指差したタワーマンション。
駐車場は地下。手馴れた動作で車を停めるとロビーを通り過ぎてエレベーターへ。音もなく上がり段々と広がっていく景色にすごいと感想を漏らすレイが少し面白かった。25階に着くと内廊下を歩いて2502室。カードキーを翳すとロックの外れる音。開けたドアを押さえ先に入るよう促した。

「どうぞ」

ドアの音に気付いたのかエルヴィンが出迎える。

「お、お邪魔…します」
「さぁ上がって」

廊下を歩く間にもレイから伝わってくる緊張感。リビングに着くとリヴァイがソファに座っていたので車のキーを投げ渡し俺は喉が渇いたので冷蔵庫を開けた。

「野郎だけだから緊張してんのか?」
「ううん、家がすごくて圧倒されたと言うか…」
「はは、面白い事を言うね」

紅茶でも淹れるかとソファに座らせてリヴァイはカウンターキッチンへ。料理をしながらでも景色が一望出来る、といっても何日も此処に住んでいれば特に感想は生まれない。しばらくして出来上がった紅茶をガラステーブルに置く。昔から紅茶だけはやたらとこだわっている弟。いただきます、1口飲んでから学校や祖父母の事、他愛もない話をみんなでした後に実は…と話題を変えた。

「結婚式が終わった後、お爺ちゃん達に相談してみたんです」
「実は私も連絡してみたんだ」

そうしたらレイさえ良ければ良いんじゃないかって。

「どうしたい?」
「でも…それなら私はソファで寝ます!部屋とかもいらないので…」
「姪にそんな事させるわけないだろう、部屋も1つ空いてるから」
「…いいんですか?」
「そもそも血縁なんだから遠慮するのはやめなさい」

その時フラリと彼女の身体が揺れた。
意識を持ち直す様に首を軽く振るがまた瞳が閉じそうになる。逆らえない眠気。

「あ、れ…?」
「眠いなら寝ていいぞ」
「ごめん、なさい…ちょっとだけ…」

その言葉を最後にレイの意識は途切れた。

「さすが即効性」

エルヴィンが横抱きに抱え上げる。
軽いな、と言うその目。
だから笑っていないとあれ程。
まぁいいか。

「いらっしゃい、レイ」


*


ぼんやりとした意識。
仄かに明るい…何かの照明…?
腕も足も、身体全体が拘束されてるわけでもないのに不思議と動かない。
意識がまるでないみたいに。
それよりも重い眠気。今すぐ寝たい。

「まだ眠いだろ」
「…お兄…ちゃん…?ここは…」
「お前は今夢を見てる」
「夢…?私…服、脱いだ…?」
「夢だからな」

下着だけ…あれ…?どうだったかな…
ほぼ寝かけているから分からない。すると胸辺りを触られる。リヴァイの手付きは大胆になっていき指が直に乳首に触れた。そのまま指の腹で撫でられる。

「ん…っ…ぁ…」
「良いのか?」
「っゃ…わから、ない…」
「じゃあこれは?」

今度は丁寧に乳首を吸われレイの首が僅かに反った。

「ぁ…っだめ…」
「硬くなってる」
「っはぁ…ぁん…やめ、て…」
「とりあえず今はここまでだな」
「ん…お兄ちゃん…」
「もう寝ろ」

無防備な格好で眠りについた。
言われた通り夢だと思っているんだろう。そこまでぼやけさせるとは大した睡眠薬だ。
細い腕を取り手錠を掛ける。
明日の朝どんな反応が見れるか。
寝てるレイに囁く。

「まだまだこれから」

だから今は、おやすみ。

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