『乾杯!!』

爽快なグラスやジョッキの音が鳴る。
レイを除いたユミル達5人は某有名居酒屋で打ち上げをしていた。美味しい料理に美味しい酒、頑張った苦労が報われる瞬間でもある。

「はー…!お疲れ様でした!」
「お疲れ様」
「今回も大成功だったね!」
「日常でも発揮してくれりゃいいんだけどな、あの集中力」
「それでレイは?」
「今日はシェアハウスのみんなと食べるって」

どうやら前々から彼等と約束をしていたらしい。それにしてもあのレイが夕飯を食べる為に外出するだなんて…みんなある意味驚いていた。
打ち上げ内容は午前中に行ったレイ・ローゼンハイムのスペシャルライブ。専属の3人とマネージャーの2人は表舞台に立つ事はないにしろ、裏では大忙し。それに長い付き合いでもあるからこうして気兼ねなく誘えるし楽しめるのだ。

「次行くけど」
「私も」
「同じのよろしく」

ザル通り越してワクに近いアニとユミルとミカサ。3杯目のジョッキをペロリと飲み干し順調だ。嗜む程度に好きなサシャとクリスタはメニューを見て何を頼もうか盛り上がっている。

「このサラダ美味しそう」
「いいですね!芋系は絶対頼みます!」
「それだと…あ、これと「レイちゃんは!天使だ!あぁそうだ天使だとも!!」
「彼女は世界を救う!」
「その子の事はさておき「さておくんじゃねぇクソニート!」ジャージ最高!!」

近い場所から聞こえてきた声にピタリと止まる。そろりと間後ろの席を木の格子から見てみると、いた。レイ達が。しかもかなり出来上がっている。ユミルはそろりと座った。指を差しただけで4人には伝わったようだ。

「此処だったんだ」
「コレとコレ…あと芋系のコレお願いします!」
「気付いてないしい「てかミケさんの着てる…って全員着てんのかよ!!」
「ハンジが特別に作ってくれた世界に4着しかないレイちゃんパーカーだ!」
「天使の可愛さを更に広めようと思ってな」
「着てないヤツ等の気が知れねぇ」

「話には聞いてたけど…」
「すごいテンションだね」

顔色一つ変えずにワク3人はゴキュゴキュと酒を飲んでいく。あれで社長と副社長と幹部って会社は大丈夫なんだろうか。余りの盛り上がりっぷりに余計な心配をしてしまった。
それからは後ろがうるさい事に変わりはないもののお互い楽しく飲みあっていた。しかし…と、サシャとクリスタは思う。この3人が酔っぱらう日なんて来るのかと。

そして爆弾発言というモノは唐突にやって来る。

「8頭兵!お姉さん達は元気か?」
「しょーもなく元気ですハイ!」
「いい子達だよね」
「いい子ォ!?どこがいい子ですか!!」

ピクッと2人が反応した。

「ミカサなんてね!めちゃくちゃ握力強いんですアレもうゴリラでしょ!掴まれようもんなら細胞死にますから!!」
「そうなのか?」
「そうなんです!」
「あわわわ…!何てことを…!」
頭捻り潰してくる
「ミ、ミカサ!唐揚げ美味しいから!ね!?」

口に突っ込まれた唐揚げを青筋立てたまま食べているミカサ。

「鬼ですよォ〜ユミルは!何かにつけて説教してくるしこの前なんざ背負い投げ喰らいましたからね!背骨折れるかと思ったわ!鬼!凶暴!」
背骨折ってくる
「ま、まぁ落ち着きなって」

口に突っ込まれたポテトを青筋立てたまま食べているユミル。

「そ、そうだよ!レイだって悪気があって言ってるわけじゃ…あれ?ど、どうだろう…ありそうな感じもする…」

全くフォローになってないクリスタ。

「後はこんな話もあるんです!!」

レイは喋り続けた。
エルヴィン達が入る隙がない程にペラペラペラペラペラペラ。
まさか2人がいる事も知らずに。


*


「ありがとうございましたー!」
「あ゛ー…食った食った」
「あれ!お姉さん達も来てたんだ!」
「こんばんは」
「っぐ…!」

店を出て伸びをする。
けどポンと叩かれた肩がヤバく痛い。

「あだだだだ!」
「レイ、私はゴリラでユミルは鬼なんでしょう?」
「そ、そそそんな事言ってない」
「私はゴリラでユミルは鬼なんでしょう?」
すいませんでした

その日居酒屋の目の前で土下座しているニートが話題になったという。

- ナノ -