ウォール・ローゼに帰還して直ぐにレイ達は審議所へと送られ殺伐とした廊下を進んでいた。この建造物はどうやって出来てるのだろう。木造建築ではなさそうだが。

「あなた達のこれからの動向は審議会にて総統が決めることになっている」
「総統…?」
「憲兵団、駐屯兵団、調査兵団を束ねる最高権力者だ。今はそれだけを認識しておいて欲しい」
「はい」
「要は帝みてぇなもんか」

重厚な扉を開けると壮大な造りをした部屋に出る。多くの人がこの場に集まっているのに音一つしない。エルヴィンに促され真ん中へと進んだが、性別を考慮されたのか鎖に繋がれることは無かった。
全方位からの視線。
肩に乗ったリヴァイからの殺気に気付いたのかレイは頭を一撫でしてから上段に座る人物を見上げた。恭しく頭を下げる。

「お初にお目に掛かります」
「名を教えてくれるか?」
「はい、久遠の都で陰陽師をしておりますレイ・ローゼンハイムと申します」
「久遠の都に…陰陽師…?ん?その生き物は、」
「式神のリヴァイです」

まるで初耳な単語に審議所はざわつきを覚えるが致し方ないことだった。

「そうか…他にも何か変わったことが出来ると聞いたが?」
「どこまでご理解頂けるかわかりませんが」

ある日気付いたらこの世界の森にいたこと。
その中で大きな妖怪に出会い対抗する為に呪術というものを使ったこと。式神は人語を話せること。現段階では久遠の都に帰る術がないこと。最後にあなた方に敵意はないということをレイは話す。

聞き終えた総統ダリス・ザックレーはふうむと唸りながら考える。嘘を話してる風にも見えない。かといってにわかには信じられない話の内容だが。

「どうだ」
「敵意がないのは確かかと」
「まぁ奇行種を討伐出来たのはコイツ等が一枚噛んだのもある」
「いつまで話してんだ。さっさと決めろ」

長話に飽きたリヴァイが肩の上で小さな九つの尻尾をふぉんふぉん振り回す。本当に人語を話した…!そのおかげで審議所が更にざわついてしまった。

「無礼をお許しください」
「威勢が良くて結構。では…君達の処遇は調査兵団に委ねるとしよう。エルヴィン」
「わかりました」
「奇行種の討伐、手助けをしてくれたこと感謝している。審議会は以上だ」
「ご厚意感謝致します総統」


*


「この部屋を自由に使ってください」

調査兵団に戻ってくる頃には一帯が夕刻色に染まっていた。レイ達が案内されたのは使われていない部屋。ベッドと机、そして小さな箪笥が置かれている。
明日に話をしようと団長が仰ってました。二、三言話をすると兵士は去っていった。終始不思議そうな顔付きは消えなかったが。

「これは…洋式の布団…?」
「なかなかにいい」

一足先に肩から降りベッドに飛び乗ればふかふかなのが気に入ったらしい。前足でちょんちょんとシーツをつついている。窓を試行錯誤して開けると新鮮な空気が部屋の中に流れ込んできた。久遠では到底見られない景色。ちょっとした旅をしに来た気分だ。

「明日から情報収集しないと」
「油揚げも手に入れるぞ」
「いつの間にヒトガタになってたんですね」

窓を閉め振り返るといたのは黒狐ではなく人間だった。それもこの世界でリヴァイと呼ばれた人にそっくりな姿。決定的な違いはこちらは着物を着てるということ。隣に腰掛けるのを見計らってレイの着物の襟に手を掛けた。素直に落ちていくそれはあっという間に彼女の両肩を顕にし、鎖骨辺りを舐めると甘い味がする。押し倒すとレイの香りがふわりと漂った。そのまま口付け舌を中に捩じ込ませる。

「んっ!ふ…ぁ…っはぁ…」
「窒息するまでしてやろうか?」
「!」

手が動かない。
目を合わせる、たったそれだけで相手に術をかけることが出来るのだ。はだけた着物に手を入れ柔らかな肌を撫でる。

「っまた…そうやって…」
「たまにはされるがままも悪くねぇだろ?」
「…欲しいんですか?」
「あぁそうだな、レイが欲しい」

さっきまで散々いい子にしてたんだ。
褒美くれよ、なぁ?ご主人様?

「でも人が来たら…その、」
「それはそれで恥ずかしがるお前が見れるから俺は一向に構わない」
「っ…本当に意地悪なんだから」
「前々から知ってることだろ?」

もう一度口付ける。
これは最上級の褒美ときたもんだ。
さて、どこから頂こうか。

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