進撃高等学校には生徒会へのご意見BOXなる物がある。こんな事やあんな事をして欲しいの要望もだが、実際のところは個性的な意見(という名の質問)が多かった。机いっぱいに置かれたミケ持参の飴をガリゴリと舐めるでなく齧りながらハンジは1枚1枚読んでいく。

「なになに?エルヴィン先生はヅラですか?だって」
「アイツの頭は知らねぇがレイはヅラだ」
「そうなのか!?違うわ!」
「そうだったの!?」
「おぉぉぉい話を聞け!」
「今度本人に聞いてみよう「無視!」いやぁーそれにしても圧倒的に多いね」
「さっきからそればかりだな」

圧倒的に多い質問。
それは『レイ・ローゼンハイム会長の性別は男、女どっちなんですか?』だった。

「ほら!半分以上それだよ」
「…どう見たって分かると思うんだが?」

セーラー服。長い髪。美人と言われる容姿。

「だよねぇ」
「学ランとセーラー服両方着ていたら混乱するんじゃないか?」
「それにしたって分かるだろ」
「しかし生徒諸君が真実を求めているんだ!教えないなんてケチはしないさ!」

入学早々から性別が話題になっていたレイ。あの見た目は絶対に女だ。と見せかけて男だ。もしくはそれすらも超える性別なんじゃないか。兎にも角にも日夜多くの生徒によって噂されていた。しかし既にレイの性別を知ってるリヴァイ達からしたら『分からないというのが分からない』だった。

「それに次は全校集会だからね、教えるにはいい機会ときた!」
「おっ、いいんじゃない?」
「そして学ランの気分になった私は今から着替えようと思う!」

そう言うと学ランを手にしたレイは空の縦長掃除用具入れの中に入っていった。いつもそこで着替えをしてるが狭さは感じないんだろうか。時折思いっきりぶつかってるのかガンッ!だったりゴンッ!という痛々しい音が聞こえてくる。数分もしないうちに出てきたが。

キーンコーンカーンコーン

「あ、チャイム」
「んじゃ体育館行こっか。ソニー!ビーン!イイ子で留守番してるんだよ!」

ちょうどチャイムが鳴ると体育館へ向かう生徒達で廊下はごった返し始める。彼等もその波に乗るとあっという間に流れていった。


*


「――というわけで皆さん体調にはくれぐれも気を付けるように。手洗いうがいを忘れずにね。えー…以上で全校集会を終わりにしますが最後に生徒会長から話があるそうです。どうぞ」
「はい!」

広い体育館。
教頭と入れ替わりに壇上に上がると軽く頭を下げマイクを握り締めた。

「あー…マイクテスマイクテス、やぁ諸君!先生方に頼みこうやって話の場を設けさせてもらったわけだが、」

ざわざわ…

「何を話すのか?そうとも!生徒会へのご意見BOXに多く投じられていた私の性別についてだ!」

「会長の性別!?」
「マジかよ!」
「ついに来たか!」
「お、おぉ!今日こそ聞ける!!!」
「エレンうるさい」


ザワつきどころじゃない。

「たかが性別にすげぇ反応だな」
「…」
「飴舐めてんじゃねぇ」

みんなが壇上にいるレイを見る。
キッチリ着た学ランと綺麗な長髪が眩しい。
やっと、やっと進撃高等学校の大きな謎が1つ解ける日がやってきた!誰もが聞き逃すまいとしている。新入生のエレンも同じだった。

「ここまで噂されているとは正直予想外だった!しかしまぁ、どこからどう見ても分かるように私の性別は「ハァァックショォォン…!!」なのでね!おや校長先生、お風邪ですか?「ハハハ、そうなんだよ」お大事になさってください!これからも生徒会共々よろしく頼む!以上、私の話し終わり!」
「「「…」」」

校長先生アンタって人は。

「だからなんで!どうして聞けねぇんだよォォ!」
「エレンうるさい」

結局レイの性別を知ることは出来ず、最終的に校長先生のクシャミはめちゃくちゃデカイという事実だけを残し全校集会は終わったのであった。

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