「では!始めよう」

放課後。
生徒会室に集合した彼等はいつもの席に座る。資料は手元に、筆記用具もノートも用意済み。顧問のエルヴィンが来れば全ての準備が完了し、生徒会長であるレイ・ローゼンハイムの一声で始まった。
マスコットキャラクターの2匹は床をチョコチョコ自由気ままに歩いている。

「まずは前回の行事お疲れ様、アンケートもほぼ満足という結果が出てるよ」

分厚い資料をエルヴィンから渡される。
中には事細かに文字が並んでいた。
レイはそれをじっと目に焼き付けていく。

「引き続きやって欲しいとの声が多数あるが」
「ならやっていいんじゃねぇか?」
「しかしやるなら前回を上回らないとな。とりあえず一旦保留にしておこうか」
「はいよー、んじゃ最重要案件の文化祭ついて」

各々が配られた学校の見取り図を確認した。
毎年文化祭は各クラスが決めた出し物を生徒会に提出し、彼等が最終的な配置を決めることになっている。
ミケが黒板にクラス、出し物を書き出した。

「約半数が食べ物系だ」
「私は…一昨年のね…いや去年の文化祭も体験して思ったんだが、」

腕を組んで考えていたレイはトントンと愛用のボールペンで見取り図を指す。その場所は校門から校舎までの長い通りだった。左右に渡って桜の木があり四季折々の姿を見せてくれるちょっとした有名スポットである。

「ここ、何も無かっただろう?」
「あー確かに」
「校舎内へ一気に人が流れ込んで窮屈に感じたのを今でも覚えているよ」
「ほう」
「だから今年は通りに店を配置したい」

これは新しい試みだ。
それなら人も外と中にバラけていいバランスになってはくれるだろう。しかしメリットだらけではない。もちろんデメリットや危惧しなければいけないことだってある。

「レイの案は…いいとは思うけど」
「ポイ捨て、あとはどうしても散らかるな」
「それは私達生徒会が徹底させる」

私達が常に見回りするのに加えて30分置きに各クラスから3人、通りの見回り兼ゴミ拾いをしてもらおう。そうでなくてクラス全体が汚さないことを心掛けてもらう。怠った場合はペナルティ。別に難しいことをしてもらう訳じゃない。

「団長、どうだろうか」
「徹底を呼びかければ問題ないだろう、私から話してみよう」
「感謝する」
「となると!」

ハンジが光の速さで暗算を始める。

「まずは木との距離…はいはい、風速も入れたとしてアレ掛けコレ掛け…毎年使ってきた店のテントの大きさがあーだから…ええ加減にセンチメートルの…出来た!ミケ!」
「よし来た」

黒板に指示された通りに書きまとめていく。
数分して出来上がったのは見取り図に似た通りの図式。1つ違うのはいくつものテントが書かれていること。

「この配置なら事故の心配も極力ないかな、一応計算しといた」
「さすがの早さだ」
「うん、ここまで固めた事案なら通るだろう。私達教師も文化祭を成功させたい気持ちは同じだからね」
「念の為案が通らなかった時の校内での配置も決めておこうか」
「あぁ」

クソ真面目な顔でレイは話す。
今日はセーラー服なんだと思うメンバーは1人もいない。気にも留めていない。ここにいる全員がクソ真面目な顔だった。いつもふざけてる訳じゃないのだ。

「まずは1年の配置だが、」


*


「あ!」

夕焼け射す校舎内。
鞄を持ち廊下を歩いていたエレンは曲がり角でレイにバッタリと出くわした。彼?彼女?は相変わらず綺麗で美人だった。

「レイ・ローゼンハイム会長!」
「おや、こんな時間に会うのは珍しいね」
「は、はい!壁美化部の活動があったので」
「お疲れ様、リコは厳しいがとても後輩思いだから仲良くしてくれ」
「あ…あの…、会長の性別って…?」
「ん?性別は「ぶえっくしょぉぉい!!」だよ」
「今な「あ゛ー鼻風邪つらい゛い゛」
「手で抑えろ殺すぞ」
「落ち着け、帰るぞレイ」
「あぁ。それじゃエレン、また明日」
「おおお疲れ様でした!」

慌てて先輩達に頭を下げると彼等は仲良さげに話しながら帰っていった。

「…」

………
……


き…聞けなかった畜生ォ……!!!

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