休日の学校はいつもより何倍も静か。
時折吹奏楽の演奏が聞こえてくるだけ。
そんな中、生徒会室で学校指定のジャージに三角巾、マスクを装備した4人。特に副会長のリヴァイからは並々ならぬやる気が滲み出ている。

「いいか、掃除とは掃いたり拭いたりすることによってゴミや汚れを取り除くことだ」

その姿は軍隊の教官の様だった。

「だが今からやるのは大掃除。すなわち普段手が届かない所まで『念入り』に『大がかり』にするということだ。生半可な気持ちでやってみろ、晒し首にしてやる」
「前回はレイの寝袋が晒し首…晒し袋?にされたもんねぇ」
「あれは恐ろしかった」
「今回も色々持ってきたのか」
「何せ大掃除だからな」

スンと鼻を鳴らしたミケが床を指差す。
オーソドックスな掃除グッズの他にも、掃除初心者の3人には良く分からないグッズまで。本当に好きなんだな掃除が。
ちなみにリヴァイがお年玉を貯めて買ったという『吸引力の変わらないただ一つの掃除機』は既にスタンバイ状態である。

「俺は床と棚、レイは黒板、ミケは窓、ハンジは机5台と室内の小物全般」
「分かった!では始めよう!」


*


「さて!愛する学校の黒板だからね、生まれ変わらせてみせようじゃないか!」

1:まずは黒板消しと粉受部に付いたチョークの粉を丁寧に取り除く。
2:次に黒板面全体を綺麗な黒板消しで拭いてチョークの粉を落とせ。
3:固く絞ったこれまた綺麗な濡れ布で黒板面を水拭きしろ。
4:乾いた綺麗で柔らかな布で黒板面の水分を拭き取って終了だ。
ちなみに水拭きに洗剤(酸性・アルカリ性・中性を問わず)を使用したら晒し首にするからな。

「隅から隅まで〜っと」

最初この説明を聞いた時「そんなに気になるならお前がやれ」とツッコんだのが懐かしい。今ではレイにとってもこの掃除方法が定着している。手順が多くてもこのやり方を貫いているのは、晒し首が恐ろしいのもあるが何より綺麗になるからだった。

「うん、いいものだな掃除は!」

いいか?窓拭きで使用する洗剤は油汚れに強いアルカリ性合成洗剤1つだけ。
意外と知られていないが窓の汚れは油分を含んでいる。屋外の窓は車などの排気ガス、室内の窓は油分を含んだ空気や手垢など。もちろんカーテンのホコリや砂埃などもついてるが、ガラスの油汚れを攻略することが窓掃除のポイントだ。

「見た感じ分からないが…結構汚れているんだな」

最初この説明を聞いた時「そんなに気になるならお前がやれ」と(略)
ミケは新聞紙やアルカリの洗剤、雑巾を使って、隙間は細部まで磨ける小さなブラシを使い丁寧に窓を拭いていく。これが意外にも熱中してしまうわけで掃除とはすごい。

「ソニーとビーンも手伝ってくれてるんだね、ありがとう!」

とハンジは言うがこの2匹、ただ机の上をチョコチョコ歩いているだけである。
よく聞け、机に細かい掃除方法はねぇ。
拭いて拭いて拭きまくれ。

「どうだお前ら、順調か?」
「あぁ」
「イエッサー!」
「異常!無駄口共になし!順調だとも!私の学校への愛が黒板に反射してるのが分かるだろう?」
「サッパリ分からねぇ、よし続けろ」

指揮官をリヴァイとする大掃除に休憩なんていう優しいものはない。というより集中してると案外気にならない。

「ふんふんふふーん♪」

終わり間近なところで微妙なレイの歌が生徒会室に響き始めた。

「ラーララ〜ラ〜ラーラァ〜♪」
「…相変わらず何というか」
「…」
「ちょっとー!レイやめてよそれ」
「ア〜ァーァ〜♪ん?変なのを歌ったつもりはないんだが。ルール〜ルー♪」


*

「終わった!なんて清々しい!」

それから数十分後、レイ達生徒会メンバーの大掃除は無事に終わりを迎えた。元からそんなに散らかってもいなかったが、やはり大掃除後の綺麗さは違う。気持ちまでスッキリした感じがする。

「ご苦労だった」
「帰りどっかでご飯食べてこーよ!」
「賛成」
「私も賛成だ!」
「おい、浮かれるのも構わねぇがこれだけは肝に銘じとけ」

家 に 帰 る ま で が 掃 除 だ

「ん?」「は?」「え?」

ごめん何それ。

と…とりあえず、みんなお疲れ様!

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