【ferocious主人公】


「起きろ」
「ぐぇ…!な、なんだ…!?」
「レイ、起きろ」
「…あ、れ?なんでいるの…?」
「休みだからな」
「あーそう…おやすみ…」
「おやすみじゃねぇ」

今すぐ起きろ。

「…何なんだよ朝っぱらから…」
「朝は終わってとっくに昼だ」
「どうしてお前が鍵…あぁ合鍵持ってたね」
「次は右に曲がれ」
「聞いちゃいない、はいはい」

文字通り叩き起こされ脅しに近い形で外出の準備をさせられたレイは、リヴァイが指示するままに車を走らせていた。電車とかもあるけど俺はあまり公共の乗り物が好きではない。だからといって隣に我侭を乗せて走るのも好きじゃないが、口が裂けてもそれは言えない。

「お洒落な通り」
「此処だ」
「え?…時計の店?」
「お前が欲しいって言ったんだろ」
「言ったけど」
「さっさと降りろ」
「ちょ、リヴァイ待てって」

慌てて車を停め幼馴染みの後を追うように店に入った。通りの雰囲気を損なわない清潔でお洒落な店内には、四方八方に時計が置いてある。それなのに窮屈な感じがしない。

「…本当に買ってくれるの?」
「何疑ってんだ」
「夢?」
「いっぺん死ぬか」
「いや生きる。そっか…なら甘えるかな、ゼロの多さに後悔しても知らないから」

と言いつつも吟味に吟味を重ねた結果、レイが買ってもらったのはバカ高くはないもののそれなりの値段の時計だった。店を出て車に乗り込む。時計を包んだ箱が入っているのはこれまたお洒落な手提げ。

「ありがとう」
「あぁ」
「それにしても珍しくない?」
「たまにはレイの我侭に付き合ってやろうと思った」
「え、我侭じゃないだろ」
「嘘付け」

次に何処へ行けばいいかも分からないのにエンジンをかけて適当に商業区内を走らせる。リヴァイと一緒だと音楽もいらない。無言であっても何も気にならない。

「我侭って今日中なら有効?」
「とりあえず言ってみろ」
「いやね、この近くに美味しいカフェあるんだよ。行こう」
「持ち帰り」
「出来るよ。持ち帰りがいいの?」
「レイの作ったメシやら菓子の方が美味い」

思わず吹き出す。
つまりさ、帰ってメシやら菓子を作れってことだよね。まぁ良いんだけどさ。褒めてもらうのは嬉しいことだしね。でもそれって俺の我侭じゃなくてもうリヴァイの我侭じゃない。

「パスタ系が食いてぇ」
「材料切れてたから買って帰る」
「了解だ」
「了解だじゃないだろまったく。じゃあ荷物は全部お前持ち、それならいいよ」
「レイ」
「なに」
「材料費も持ってやる」
「最高だありがとう美味しいパスタ作ってあげるからねリヴァイ大好き」

そうだ、時計のお礼にフルコースにでもしてあげよう。外には青空が広がっていた。今日くらいは良い意味で何も無い平和な1日になりますように。



「来年のホワイトデーも楽しみだ!」
「そういや去年も言ってたなクソ野郎」

- ナノ -