「さぁ今日も始めようじゃないか!」
放課後。
進撃高校生徒会は毎日活動している。
とりあえずレイがあれやこれや言い出す。
ミケが書き出す。リヴァイがケースバイケースでツッコミを入れる。ハンジがすぐ様予算を叩き出す。この繰り返しで最後に残ったものを企画書として現し実行する。遊んでる暇などなく、奉仕の心がないと出来ない事だがそれが生徒会の伝統なのだ。全ては全校生徒に楽しく学校生活を送ってもらうため。
時折議論がヒートアップし過ぎてあらぬ騒ぎに発展するがそれもお約束だった。
「っと…今回はこんな感じかな」
「まとめておいた」
「仕事が早いぞミケ!」
「あとは企画書エルヴィンに出すだけでいいから終わりー!」
「みんな今日もお疲れ様!サプライズで私から差し入れだ!」
数時間後、ようやく活動という名の議論を終えると本日は学ランを着たレイが鞄からガサガサと白い紙状の袋を取り出した。仲良く机をくっ付け合ったその上で手のひらサイズのミドリガメ『ソニー』『ビーン』がチョコチョコと動いている。
「たい焼き?」
「そう!マダムから頂いてね」
「ほう」
「あったかい内に食べてくれ!」
「いただきまーす!ってウワァァァ!!」
「何だ急に」
「いただきまァァ
アアアアおいちょっと待ってくれ」
「気持ち悪い顔やめろ」
「それはすまなかっ、真顔に気持ち悪い言うなボケ。違う」
「何が」
バシンッ!!
手のひらで思いっきり机を叩いたレイ、同じくハンジはリヴァイとミケを信じられないモノを見る目で見ている。叩かれた時の衝撃でソニー達が少し跳ねた。2匹は頭をかじられ、もう2匹は尻尾をかじられ。
「たい焼きは頭から食べるモノだろう!!」
「そーだそーだ!」
「は?」
「食い方に文句付けんじゃねぇ」
「いいや付ける私は付ける!」
「勝手に言ってろ」
「だからいつまでも経ってもチビな、痛ッ!」
「
ほう?それで?」
「リヴァイ落ち着け」
理不尽ながらも食べ方を怒られるだけならまだ無視できる。だがそこに身長の話を持ってこられたらさすがの副会長だって黙ってはいない。その目とオーラは既に戦闘態勢だった。ポンポンと尻尾派の同士ミケが宥めようと肩を叩くも遅し。
「いいか?テメェ等はセンスがない」
「セ、センス?」「……センス?」
「(センスの問題なのか?)」
「そうだ。尻尾から食えば最後まであんこが楽しめる」
「でもチビには変わりな、痛ッ!!」
「ちょ、レイも発言学習してよ!」
「俺達はガキの食い方なんざしねぇ、なぁミケ」
「そこで俺に振るのか」
あぁ困った。尻尾から食べる事に対してこれといったこだわりもない。リヴァイは並々ならぬこだわりが(たぶん)あるようだが、俺は尻尾派とかじゃなく昔からこう食べてきただけでつまるところただの巻き込まれだった。
「かわいそうに!頭から食べる幸せは尻尾派には分からないだろうね!」
「分かりたくねぇな」
「即答!」
「尻尾つったら尻尾だ、なぁミケ」
「…そうだな」
「こうなったら会長命令で頭から食べろと言ってしまおう(このデカチビコンビめ!)」
「レイ!本音と建前逆!」
皮とあんこのバランスが!
頭から、尻尾から食べるとどうなるのか!
それに比べてうんたらかんたら。
よくまぁたった3人(約1名巻き込まれ)しかいないのにたい焼き論が次から次へと出てくるものだ。リヴァイは相棒が適当な相槌だけでも援護射撃と勘違いしている様で、先程よりいくらか機嫌が良かった。レイもハンジもよくやるな。
だが俺は思う。
そろそろ終わりにしてもいいんじゃないかと。一応挙手と共に。
「こういうのは、おい」
いたのか!みたいな視線やめろ。
「いつまでやっても決着がつくものじゃない。第3者を入れるべきだ」
「楽しそうな事をしているな」
「あ、第3者」
「絶妙なタイミングだ団長!あと助けてくれないか!」
生徒会の顧問であるエルヴィン・スミスがドアを開けるとまとめられた企画書が目に入った。やる事はやる生徒達なのにどうしてリヴァイはレイにプロレス技をかけているのかサッパリ分からない。
話を聞けばたい焼きをどう食べるかで揉めているのだという。揉める事でもないと思う。
「なるほど」
「エルヴィンはどう食べるの!?」
「痛いッ!それは首が外れ、だから助けてくれな、い、か!!」
「尻尾だよな?」
「私はナイフとフォークを使って食べる」
………
……
…
「は?」
「この敵か味方かも分からない食べ方」
「拍子抜けしてしまった」
「何て非人道的な食べ「4人は頭と尻尾それぞれ手で食べるのか、変わってるな」
お前が言うな。
完全アウェーな空気をものともせずにエルヴィンはパンパンと手を叩く。
「「「「……」」」」
「さ!下校時間だ、レイは泊まるなら外に干してある寝袋をそろそろしまいなさい」
「わ、わかった。団長も良かったらたい焼き…」
「ありがとう、頂くよ。それじゃ」
「……いいのかこれで」
「良くないがこれでいいんだろうな」
さすが顧問と思った放課後。