(ついてない人は学生リヴァイ)


空気を切る綺麗な音と一緒にゲームオーバーはやって来た。周りでカキーンカキーンという所謂爽快な吹っ飛ばし音に包まれる中で、俺は1人だけバット片手にしばしの呆然。

「どうしちゃったんですか!?ご、豪快な空振り初めて見たんですけど」
「……自分でも信じられねぇ」

納得いかないままバットを戻し、後輩のレイと近くのベンチに座る。
『先輩!今日バイト休みなんで良かったら帰りゲーセン行きませんか?』
特に予定がなかったので了承したはいいが本当に何なんだ。何もコレに限ったことじゃない。朝はパンを落とすわ、授業中にシャー芯は骨折並みにボキボキ折れるわ、制服のYシャツは間違えてカラーシャツ着てくるわで、とにかく朝から今まで最悪な状況下にいるわけだ。

「確かについてないですね…カラーシャツは馬鹿でも間違えないですけど。ま、誰にでもそういう日ありますよ!」
「おいテメェ…黙って聞いてりゃ」
「だ、だって普通間違えないですって!」
「チッ、占いじゃ2位なんだがな」
「占い信じてるんですか?」
「偶然朝見ただけだ」
「なるほど、とりあえず一息つきましょう!飲み物でも買ってきまーす」

レイの背中に紅茶系がいいと言えば片手をヒラヒラ。たぶん分かりました!の意味だろう。と思いきや遠くから『そこから1歩も動いちゃダメですからね!先輩今日厄日だからァァー!!』大声でうるせぇよクソ野郎。デカい溜め息を1つして、ゲームセンター特有の騒音を聞いていた。その中でもハッキリ聞こえたレイの声。声のデカさおかしいだろアイツ。

「…しかし本当にツイてねぇな」

しばらくして片手に紅茶系、もう片手にジュースのレイが戻って来た。

「奢りです」
「悪い」
「すぐ飲むなら開けちゃいますね」
「あぁ」

キャップを緩められたペットボトルを手渡される。距離なんてないに近いの距離。それを取ろうと左手を伸ばした。が、

ブショァァアァァアァ…

左手は見事に空を切りベンチに落ちた紅茶が勢い良くハジケて俺のYシャツ一面にダイブした。つまるところ目の前のペットボトルを何故か取り損ねた。

「……」
「……」
「お…お祓い行きます?」
「…そうだな」

違う、カラーシャツだ。訂正。


空振り三振水曜日

今なら本気で男泣きできる気がした。

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