(ついてない人は学生ハンジ)


常連客というのは基本いい人たちが多い。
私が放課後バイトしてる場所はカフェなんだけど、駅が目の前ってのもあってかOLやサラリーマンだけに限らず高校生や親子連れ、あとあと、おじいちゃんおばあちゃんとか。とにかく幅広い年齢層の客がひっきりなしにやって来るんだよね。
そんで今日は火曜日。

「お宅んとこはコーヒー1杯もマトモに淹れられないわけ!?」

常連客というのは基本いい人たちが多い。
こういうのを除いて。この毎週火曜日に来るよく分かんない肥えまくったオバサン。何かといちゃもんつけてくる。要は厄介なクレーマーだ。

「あのねぇ、コーヒーがこーんなに苦いってどういうことよ!?」
「すみません(コーヒーは普通苦いだろ!)」
「申し訳ございませんってあなた、謝れば解決って気なの?」
「ええと、そのようなつもりは…」
「話にならないわ!ちょっと店長呼んでよ!」
「如何がなさいました?」

周りの客が嫌そうな顔してんのに気づいてないのかこのオバサン。お決まりセリフ「少々お待ちください」を言おうとしたらナナバ店長はすぐ隣にいた。

「あなたの店はコーヒー1杯まともに入れられない店員を雇ってるのね!」
「大変失礼を致しました」

店長は笑顔を崩さずに淡々と話している。私は黙って戦いを観戦中だ。

「ロクな謝り方もできないし」
「申し訳ございません」
「まったく!上がこうだから£%@§☆$℃…」
オバサンは息継ぎなしで店員のダメ出し、コーヒーとかのダメ出し、料理とかのダメ出し、あーだのこーだのくっちゃべってる。肺活量が超半端ないな。俺だけでなくお客さんも店長とオバサンのやり取りを見ていた。

「!‡¶∬ゎʼn♯♭♪†¢#」

店長は笑顔で聞いてるし。
あれ?私って巻き込まれてる?

「♯‰Å♭♪†¢#¶‡!?◎」

店長は笑顔で聞いている。

「℃¥$£@*≧∞♂◎#¢†♪♭♯‰Å∬¶‡…わかった!?」
「はい、お言葉ですがお客様」

やっとオバサンの長い長い主張が終わったところで店長が口を開いた。

「お口に合うのは此処ではなくあちらではないでしょうか?」

指差した先には、牛丼屋。
ちょ、何言い出すの店長。

「お客様のお身体に釣り合うのはコーヒーなど可愛らしいものではなく牛丼ではないかと」
「な、」
「高カロリーですし。特盛つゆだくの肉1.5倍など如何でしょう、きっとご満足頂けるのでは?ハンジもそう思うでしょう?」
「え゛!?」

やめろよこっちに振んなよ!!
お客様なら余裕でしょうと言って店長はニッコリ。店を去っていく時のオバサンの顔、到底言葉では説明できない顔だった。
ある意味ついてない私。

「ありがとうございました」
「店長ヤバイ」
「ふふ、伊達にこの店の店長してないよ」

あの日から、オバサンは牛丼屋で見かけられるようになったとか。


火曜日のクレーマー

勝者、ナナバ店長

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