珍しく休日が重なりシェアハウスに5人が揃った。それであっても家の中では朝から晩までテレビやらDVDやらCDでレイちゃん漬けな事に何ら変わりはない。

『みんなー!盛り上がってるーッ!?』
「ンアアア!ンぎゃわいい!!とってもがわ゛いいいよおお!!」
「泣ける…ッ!!」
「世界の救世主降臨!」
「地上に降りた最後の天使!!」
「「「「レイちゃァァァん!!!」」」」

撮影のインタビュー詰めの毎日。たまにはこうして何もせずのんびりするのもいいだろうと思っていたのだがどっこい、リビングじゃ疲れ取れるどころか耳が死ぬぜオイ。ライブに行く時と同じ格好で彼等は叫び、踊り、泣いていた。冷蔵庫から出したお気に入りのジュースを飲みながらその様子を観察していたが各々果てしない体力だ。

ひと段落ついたのか目がチカチカするくらいのキラキラオーラ全開で皆さんが一休み。これはジム行かなくても平気だろうなって思った。

「盛り上がってるか8等兵!」
「うわスゴッ光ってるよ!エッ、勝手に盛り上がりメンバーに入れてます!?」
「パチ屋は?」
「ニートにも休日が必「元気そうやねぇ」
「!!!?!?」

すぐ様リビングのドアを見る。
ユミルと、ミカサと。
あと1人、チョコンと2人の間に立っている私が会いたくて会いたくて仕方がなかった。
小さな手をゆっくり振って今日は休みって聞いてたから、顔見るついでにご飯作りに来たんよ。
私にとっての天使が目の前にいた。

「ばーちゃァァァん!!!」


*


「次の愚痴も聞いて!」
「はいはい聞いとるよー」

孫が足にしがみつこうが全く気にせず7人分の料理を手際良く作っていくばーちゃん。話を聞くとレイがこのシェアハウスに来る前から定期的に来ては食事を作ってくれたそうで。

「余程会えたのが嬉しかったみたい」
「だとしてもしがみつくか?」
「ミカサ、これ持ってっとくれ」
「わかった」
「次も愚痴になるんだけど…」
「何でも聞くでな、レイは昔っから頑張り屋さんやしねぇ」
「ばーちゃん…ッ!!」

それからイタダキマスをするまでレイはずっと感動に打ちひしがれながら足にしがみついていた。


*


「美味かった」
「いつもご馳走様です!」
「ご母堂の味はとっても安心する味だな」
「エルビンさんもねぇ、ハンちゃんもリバイさんにも気に入ってもらえて何より何より」

わしゃわしゃ

「よーしよし、ミケは相変わらず可愛いねぇ、よーしよしよし」
「そして俺だけ猫だと思われてる」
「「すみません、本当にすみません」」
「あれ?」

食後はミカサ達が買ってきた和菓子で一段落。相変わらず2人はレイの姉だと思われているがそれでもいいだろう。実際その辺りのポジションにいるのだから。それから当たり前のように4人から彼等が大大大好きな絶頂アイドルの話を熱く聞かされたが、いつの間にか1人ソファに寝そべっている事に気付く。

「行こうか?」
「いんやぁ、私が行くからええよ」

席を立ちソファの前に回る。
レイは寝ていなかった。
ただDVDを見て泣いていた。
表情を全く変えずに。
ばーちゃんはにっこり笑いかけながらしゃがむと目線を合わせる。
涙がこぼれ落ちていくのも気にせずにレイは泣いていた。
みんなは後ろにいるから泣いてるの見えんよ、とばーちゃんは互いにしか聞こえない声で話しかける。

「夢、叶えたねぇ」

言葉を吐かずに頷く。

「よぉ頑張ってきたねぇ、ミカサとユミルと一緒に」
「うん」
「天国できっと喜んどるよ」
「よかった」

今はただこの幸せに浸ろう。
あの日の思い出と一緒に。
ご飯、やっぱり美味しかった。

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