『ウオオオオオアアアッ!』
『兄者ァァァァァァァッ!!』
『ウオオオオアアーーッ!!!』
『アアア兄者ァァァァッ!!!!』

「すごい…!」
「これがレイの好きな映画…」
「兄者ァァァァァァ!!」
「おぉ!俺も叫「やめなさい!!」


*


「最新作見れて良かったぁ…!」

今日はデートだ。エレンとレイの。
武力がなくて無駄に女子力ある残念な友人と、女子力なくて無駄に武力ある美少女なのに残念な幼馴染みと。いやいや。

だからデートって3人でするもんじゃなくね?
「決めてたんだよな?」
「うん!誘おうって話してたの」
「そういうお気遣い他で使ってくれたらもっと嬉しかったよ!!」

短期間で学んだこと。
宇宙人には何を言っても伝わらない。
残りのコーラを飲み干しながら、それは嬉しそうに『押忍!!』だとか『漢道!!己の信ずる道を行け!』とか『鍛錬は嘘を付かないッ!!』なんて描かれた映画グッズをしこたま買い込んだレイを見る。ハチマキとか今にも付けそうなので阻止した。なんていうか、俺なら絶対に買わない。なんでって、別にいらない。

「……好きだもんな兄者シリーズ」
「違うよ!今見たのは『紅蓮編』で兄者が主人公だけど前見たのは『白蓮編』だか「分かったまとめて悪かった」
「レイすげぇ…熱く語るのかっこいい…!」
「いちいち話こじらせ、ちょ、お前もグッズ買ってたー!!」

エレンもいつの間にか『押忍!!』タオルを首から掛けてる。どうなってんだ。もしかして買ってない俺がおかしい?ンなワケあるか。掛けんな恥ずかしい!
それよりもずっと、最初に待ち合わせした時から気になってるモノがある。エレンが持ってるそれは可愛らしいバスケットだ。もしかして中には手作り弁当が入ってて今日は天気が良いからピクニックしよう!とかじゃねぇよな?あれ?

もう結論出てんじゃん。

「……お前のソレ」
「今日天気が良いからピクニックしよう思ってさ!」
「あ、そう」
「すぐ近くに大きい公園あるでしょ?楽しみだよね!」
「な!」
「ジャンの好きな唐揚げもあるよ!」
「楽しみだなオイ!!!」


*


「わぁ…!」

公園に移動した俺達はファンシーなレジャーシートに弁当を広げて座っていた。次から次へとバスケットから出てくるサンドイッチやらおにぎりやら、玉子焼きに唐揚げタコさんウインナーetc

「ほら唐揚げ!」
「おう」
「レイにはコレな!」
「ありがとう!いただきます!」
デカさ自重しろ

とんでもなくデカいオニギリを美味しそうに頬張っているレイ。このゴリラ並の食欲。お世辞じゃなくてレイは誰が見ても美少女と言うだろう。それなのに全く美少女に見えないのは長年幼馴染みをしているからだと思われる。その姿を微笑ましく見てるエレン、お前は母ちゃんか。

「すっごく美味しい!」
「良かった!」
「料理が出来るって羨ましいなぁ」
「本当に苦手なのか?」
「おぇっぷ」
「だ、大丈夫!?お茶!」
「作った料理食べたの思い出しちまった…」

見事リアルに腹に蘇ってきた吐き気。アレは酷かった。料理の腕は『まだ道に生えてる怪しいキノコ食べて食中毒になった方がマシ』と表現するのが一番分かり易い。

「クッキーも焼いてきた!」
「エレンすごい!」
「食べてくれ食べてくれ」
「天気良くって楽しくて幸せ…」
「ホントだよなぁ…」
「お前ら頭の上に花畑浮いてる」

フヨフヨとこっちにまで花畑が飛んできたから手で払っておいた。そしたらバスケットをゴソゴソ。

「よし!やるか!」
「ピクニックといったらだもんね!」
「は?」
「「バドミントン!」」
「わかったそこで自由にやってろ!!」


*


「朝から晩まで一体どこに行ってたんだ?」

広い和室にハンジとミケを除く4人は集まっていた。父親達は険しい顔付きだ。

「どこ行ってやがった」
「お父さん心配し過ぎて庭の木、切り倒した」
「またやったの!?もー…」
「愛娘の心配をしない父親が何処に…ハッ!?まさかコンニャクとデートして来たわけじゃ…!」
「コ、コンニャク?今日はお爺ちゃんとお兄ちゃんと買い物してたの」

並べたのはそれぞれへのお土産。

「お父さんには木刀。そろそろ新しいのいいんじゃないかなと思って」
「レイ…ッ!なんて、なんて気の利く娘なんだ!!」
「お兄ちゃんには欲しがってた箒『ホコリメッチャトレール』だよ」
「レイ…!」
「はい!ミカサには宇宙人柄のタオルとお財布」
「お姉ちゃん…!」
「あぁ…!私達の為に朝から晩まで…!」
「じゃあ私はお風呂入ってくるね」
「「「ごゆっくり!!」」」

「どうだったー?」
「大丈夫だった、2人共ありがとう!」
「せっかくのデートだもん」
「楽しめたか?」
「うん!」

ニッコリと笑うレイはそれはそれは美少女だった。

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