【絶頂アイドル主人公】


「お疲れさん」
「お疲れ様」
「眠いーーー」

撮影を終えレイはいつもの様に車に乗る。
スタジオに入った時はまだ明るかった繁華街もすっかり夜の色合いになっていた。今日はバレンタイン。色んな人がいろんな人にチョコをあげてることだろう。義理も友チョコも本命も。今車から降りたらチョコ臭がしまくりそうだ。

「みんなよくやるねぇ…」
「人によっては一大イベントだからな」
「そういうもの?」
「そういうもの」

ふーん。イベント事にも知識が化石なレイはスマホでバレンタインを調べてみる。なになに、由来は西暦3世紀のローマ。皇帝クラウディウス二世(在位268−270)は若者達ががなかなか戦争に出たがらないので云々…最後まで読んだところ『バレンタインさんの命日』なんだとか。
普通だと思ってた女が男にチョコを贈るっていうのは実はとある国独自の習慣であって、本来は恋人や友達、家族などがお互いにカードや花束、お菓子などを贈り合うらしい。

「…」

家族…ならあの人達にもいいのかな。

「このあと飯でも食うか?」
「デパート行きたい!」
「は?」
「人混み嫌いのレイがそんな事言うなんて」
「眠気は?」
「あるけどデパート!」
「急なトイレ?」
「オイ」

とにかく後部座席で「デパートー!デパートー!」と駄々に駄々をこねてゴロゴロ寝返っていたらうるさいと怒られたものの、ユミル達はワガママを聞いてくれて近場のデパートまで行ってくれた。見事な着地で降りると2人を制する。

「一緒にトイレついてくか?」
「2人は車で待っ…違ぇよ」
「1人で大丈夫?」
「バレないバレない!じゃーよろしくー!」

すたこらさっさと去っていく。
一体どういう風の吹き回しなんだか。
迷うことなく足を進めたレイは1つの店の前で立ち止まる。

「いらっしゃいませ」
「あー…えっと…コレください!」
「かしこまりました。文字は如何がなさいますか?」
「じゃあシンプルに、」


*


「おや?8等兵は?」
「先寝てる。あ!そうそうレイからコレ、私達にバレンタインだって!」
「ホールケーキ?」

ハンジはパカッと箱を開く。
中には大きなチョコのホールケーキが入っていた。
はて?今日は誰か誕生日だったかな?

「ん?チョコプレートが、」
「おめでとうじゃなくて『いつもありがとう!』になってる」
「お世話になってるからって言ってた」
「そこまで世話もしてねぇけどな」
「でも美味しそう!せっかく貰ったんだから食べよ食べよ♪」
「そうだな、頂こう」

明日の朝飯はレイが食べたいのを作ってやるか。ミケ優しい!てか美味ぇなコレ!貰った以上お返しはキチンとしないとね。レイちゃんのスペシャルブロマイd待てエルヴィン、そんな貴重なレイちゃんグッズをニートにやるのか?やめろお前の所有物だろうとそれは俺が却下する。だったらジャージはどう?それは名案だ、採用しよう。何処で買う?いつも激安の殿堂で買ってるからそこでいいんじゃない?10着くらい買えばいいだろ。


*


「にしてもデカ過ぎだろ」
「お婆ちゃんも良かったら一緒に食べよう?」
「ありがとう。いんやぁてっきり2人の誕生日かと思ったよ」
「御丁寧にロウソクまで付いてるしな」
「私は10日でユミルは17日」
「そうだったそうだった、でも3人で食べ切れるか分からんねこの量は」
「どうして人数考えなかったんだろう」
「それがレイの良さでもあるから許してやりんさい。お返しせんとねぇ」

お返し…チョコ?ブランドと駄菓子の違いも分からないからな。花?花がかわいそう。ほぉー近頃の饅頭はこんなに美味いんかい。ケーキだよばーちゃん。そうだったそうだった。思ったんやけどレイがいつも着てる何て言ったか…ジャージー?ジャージだよばーちゃん。それ買ってやったらいいんでないかい?おぉ名案!なら激安の殿堂で買っておこう。どうせなら10着くらい買うかねぇ。

それからジャージを20着も貰いレイが踊り狂って喜ぶのは1ヶ月後の話し。



むにゃむにゃ…チョコくれぇぇ!!

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