陽射しが容赦なく襲う。不機嫌な表情のまま枕に目を伏せ静かに瞬きを数回。徐々に慣れていけばゆっくりと顔を上げた。すぐ隣にミケが寝ていて、閉じた目を隠すように長い睫毛が生えている。しかしよく見れば自分も彼女も薄い布団を掛けているだけで何も着ていない裸の状態。

「ミケ」

軽く身体を揺すっても起きない。
昨日から夜通しベッドの上で一方的に責め尽くした、俺が。煽る仕草をしてきたコイツが悪い。元はデカヒゲ野郎だってのに一体何処でそんなモノ会得した。しかし先程より強く揺すっても一向に起きる気配は感じられない。さすがに無理させたか。それはもう『隅々まで』美味しく頂いたから。

「…」

改めてミケに触れてみる。
男の時の面影は何処かありながらも骨格から声帯、果てや性器に至るまで変わった。女になった。精神年齢とにおいを嗅ぐというクセ以外は。
腕も足も骨張った感触はなくなめらかに手が滑っていく。掛かっていた布団を遠慮なく捲りまじまじと観察。下はもちろん付いていない。腹を撫で上へと向かう。胸…そういえば昨日の最中「どうせ小さいと思ってるんだろ」とか急に言ってきたが別に思った事はない。むしろこれ以上デカくなったら色々と問題が生じる。そのままでいいと伝えたら恥ずかしそうに…そういうのを煽るっていうんだクソ野郎。

「ん…っ」

胸に触れると少し身じろいだものの再び寝息を立てる。細く小さな全てが女特有の身体。いつまでも見ていたいがそうもいかない。

「ミケ」

耳元で強く囁くとようやく起床。
うっすらと開かれた瞳が俺を捉えれば、すんと鼻を鳴らしてぼんやりと視線を巡らせていた。

「…おはよう…」

未だ起き切れていないミケにキス一つ落としサイドテーブルに畳んでおいた兵服に着替えていく。

「ここで寝た…?」
「昨日何したか覚えてねぇのか?」
「…覚えてる…」
「一緒に寝たいから部屋帰るなっつったのお前だぞ」
「…言った…」
「身体は?」
「問題ない…そうか、昨日…」

何の不自然さも戸惑いもなく女物の下着を着ていく辺り元男だったと誰が思うだろう。昨日、で言い淀んだミケの顔は少しばかり赤い。

「どうした」
「いや…」
「言え」
「…リヴァイとするのは…いつも気持ちいい…」
「…」

着替えていた手がピクリと止まる。
何言ってんだ馬鹿か。馬鹿なんだな。
振り返り上半身だけ起こしていたミケを覗き込む。逸らされたからまた覗き込む。逸らす、覗き込むの繰り返し。

「…なんだ」
「そりゃ足りねぇって事か?」
「そ、そういう意味で言ったわけじゃなくて」
「会議までまだ時間あるぞ、良かったな」
「ちょ、リヴァイ…っ」
「俺と気持ちいい事するの好きなんだろ?」

据え膳食わぬは男の恥。

「す…好き、だが…」
「ん?」
「…男に戻っても本当に好きか?」
「当たり前の事いちいち聞くんじゃねぇ」

その事実に変わりはない。
だがもし、このまま女で一生を生きていくことになったらそれはそれで構わない。そしたら…そうだな。

「結婚してガキでも作るか」


*


「今回も可能な限り索敵、伝達を広げる陣形で行く。まずは…」

団長室に集まった幹部達を見回しエルヴィンは一つ一つを説明していく。しかしよくこんな陣形を1人で思い付いたものだ。その頭脳明晰に頭を下げる気はねぇが頭が下がる。

「リヴァイは五列中央・待機」
「あぁ」
「私とナナバは初列索敵ね、了解」
「ミケは三列三・伝達。前回同様緊急時には動いてもらって構わない」
「わかった」
「詳細は最初に伝えた通りで以上だ。よろしく頼む」

長い会議はこれで終わり。
チッ、それにしてもベタベタベタベタ触りやがって。思いっきり顔に出てたのか俺を見た2人はニヤニヤしている。ぶっ飛ばしたい。

「あれれ〜?男の嫉妬は醜いよぉ〜?」
「汚ぇ手をどけろ」
「うわぁ俺様も俺様!ミケ、エルヴィンに乗り換えちゃいなよ!」
「私はいつでも待ってるからね」

悪ノリが好きなエルヴィン。
まとめてぶっ殺したい。

「…」
「あれ、ミケ?」
「どうしたの?なんか不安な事でもあった?」
「…そうじゃない」
「わかった絶対リヴァイでしょ!ちょっと何したのさ!」
「ふざけんな何もして、おいそうなのか?」
「や、」
「言ってみて?相談に乗っ、え?や??」

「やっぱり…腰が痛い」

すんすんと鼻を鳴らし小声で。
自然と俺に視線が集まる。

「リヴァイじゃないか」
「そうだな」
「一方的に舞い上がったんでしょ!」
「否定はしねぇ」
「それで!?エッチはど「黙れよお前ら」

否定はしねぇが、コイツが悪い。
だがまぁ、次は抑えられるように努力はしようと思う。出来たらの話だが。

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