ノックまでしてひと声掛けながら部屋に入っても気付く事は無く生気のない目で何処か一点を見つめていた。こんなに視界に入っているのに。だから肩に触れた時、反射的に手を振り払われたのだと思う。まるで違う彼女。その目は自分のした行動に驚きながらも酷く怯えた色をしていた。

「…ごめんなさい」

よく見れば肌には何ヶ所か噛み跡があり赤くなっている。あぁコレね、と笑う目は未だ変わらない。

「興奮すると犬みたいになる人なの」
「それは行き過ぎだろ」
「心配あり「ずっと」

いたい。こわい。やめて、放して、助けて。お願い、だれか助けて。どんなに痛くて怖いセックスでも我慢した。何故かチラついた昔の、知らない男達が性のにおいしかしない地獄に私を突き落とす瞬間。二度と聞きたくない笑い声と身体を這う感触が蘇ってくるようで。

「つらかったんだな」

震え出したミケをリヴァイは抱き寄せた。
しばらく目を見開いて呆然としていたがトクンと心臓の音が聞こえて…それから兵士長のにおいがする。鼻をすんとすればやっぱり性のにおいも血のにおいもしない。不思議な…あぁそうか、これは安心するにおいだ。思いが溢れそう。

「もうやめろ」
「出来ない」
「自由になって幸せな姿クソメガネに見せてやれ、それがお前のやるべき事だ」
「…どうしてそこまで?」

お前の泣く顔や怯えた顔を見たくねぇし、知らないヤツとセックスするのも腹が立って仕方ねぇ。もうこんな世界とはさよなら、悪夢は終わりだ。怖がらなくていい。わがまま言って甘えて好きな事してありのまま生きろ。その隣に俺がいてやる。

「ま、待って」
「?」
「それつまり…私を好き、ってこと?」
「そうだな」
「…娼婦だけど」
「元だろ」

あなたと出掛けた日の事を今でも話すんだ。楽しかったって何度も言うの。また会いたいって。兵長、あの子を自由にしてあげてよ。ヘラヘラしてるかと思いきや突然バカ真面目な顔で頼んできやがって。

「ミケ」
「…好き」
「だろうな」
「何それ。あ…笑った顔初めて見た」
「うるせぇよ」
「…キス…していい?」

初めての愛情があるキス。
抱き締められるだけで安心する。
身体の錆付いた部分が剥がれ落ちていく。
ハンジ、分かったよ。身体で触れ合わなくても伝わるってこういう事だったんだ。


*


「怖いか?」

大丈夫とミケは返すが可笑しいくらいに緊張している。幼稚な表現を借りるならドキドキというモノかもしれない。大丈夫…と返すのでいっぱいいっぱい。し慣れたセックスの筈なのに全てが初めてのような気がした。

「安心しろ」
「…わかった」
「痛かったらすぐ言え」

ゆっくりとした手付きで身体に触れる。
途中傷ついた場所には1つ1つキスを落として。
素肌が触れ合うとあたたかい。

「ん…」
「躾のなってねぇ駄犬だな」
「な、なんか…変…」
「立ってる」
「言わ、ないで…っ」
「なるほど、気持ちいいのか」
「っ…そう、かも…ゃ、だめ…っ」

そうかも。つまり気持ちいいと。
更に刺激すると分かりやすい喘ぎ声。それでも片方の手は繋いだまま、感じる度にギュッと握ってくるのが愛しい。

「…指、入れるぞ?」

そっと秘部に入れると蜜が指に吸い付いてくる感覚。そのまま引き抜きまた入れるの繰り返し。その度に空気と混ざり合って情事の時しか聞けない音と、唇を割り入れた舌に舌が絡み合う音が響く。
痛い。怖い。その言葉を発しないんだから快感を得ているんだろう。顔見りゃ一発だが。しばらくするとミケの身体が大きく震える。指もソレをしっかりと捕らえた、捕らえた迄はいいが。全く抜ける気配がない。

「あっ…!ぁ、ん、っはぁ…」
「……抜けねぇ」
「はぁ…えっ…?」
「締まりが良いって事だろ、気にするな」
「指だけなのに…っ気持ち良かったから…」
「そうか、ならいい」

やっと抜けた指。
結構痛かったのは秘密にしておくか。
すんすんと鼻が鳴る。

「…リヴァイ」
「どうした?」
「つ…続きは…する?」
「嫌ならしねぇよ」
「そ、そうじゃない…リヴァイのが…欲しいなって…」

好きな人とは最後までしたいの。
だったら願いを叶えてやるまでだ。リヴァイは濡れ具合を確認してから自身を取り出し秘部の先端に当てるとミケの腰が少しだけ浮いた。一度達したおかげか先程よりはキツくない。

「…もう少しで全部…っ入った」
「何となく…分かる」
「痛いか?」
「…痛くない、むしろ幸せ」

手を伸ばしリヴァイに抱き着く。
その時ゆるりと下から上に動かされる。
お互い好きだと我慢出来ないみたい。

「んっ…!リヴァイの、大きいね…」
「そりゃ褒め言葉か?随分余裕だな」
「…っまだ、聞いてない」
「今までの駄犬全員忘れさせてからだ。そしたら飽きるまで言ってやる」


それは2文字?5文字?
あなたの口から紡がれるならどちらでも。
ねぇリヴァイ、大好きだよ。

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