「や…あっ、んぁ…っ」
「っあぁ…いいねその顔…」

自分の中に入り込んだ性器が下から上へと突き上がってくる度に強い快感が押し寄せた。
熱を持った息遣い、肌の感触。
絡み合う舌と舌が甘く感じる。
ほのかに香る香水は媚薬。
快楽を与えるように這い蹲る細かな手の動き一つ一つを敏感に感じ取り喘ぐ姿。
生々しい性の音が部屋に響き渡る。
今度は自分から激しく動けば嬉しそうで。

「っ…これ、好きでしょ?」
「好き、うん…っもうそろそろかな…いつもと同じでいい…っ?」
「ぁ、ん…いいよ…っ、なか…出して…あっ…!」

脈打ち精液が注がれていく感覚。
ぐちゃぐちゃになっていく様な、何といえば…クセになるとでも言うんだろうか。
セックスでしか味わえない感覚に支配されながらベッドに寝転がる。
足の先まで快楽の余韻に浸りながら相手に口付けて、引き抜かれた秘部に指を入れれば相手の精液にまみれた。

「ん、はぁ…っほら、たくさん出た…」
「はは、毎回抑えきれなくて。やり始めるとあっという間だなぁ…」

名残惜しそうに部屋を出て行こうとする相手を、うつ伏せで頬杖ついたままに見送る。開かれた5本の細い指がヒラヒラ動くだけでも惹き付ける空気を持っていた。

「また来て、待ってる」
「それじゃ」

閉まり切ったと同時にベッドから降りて窓を開ける。脱ぎ捨てたドレスではなく近くに掛けてあった薄手のバスローブを羽織り、手繰り寄せた煙草に火を付ければ開け放たれた窓から煙がゆらゆらと流れていった。元から人気の無い所にあるが夜中になると更に静けさと暗さが増す。

「ミケ」

お疲れ様の声に煙を吐き出して答えると、入って来た人物はあたたかい布で彼女の身体を拭き始めた。立ったまま拭かれる事には慣れたというよりいつものこと。

「今日もぶっ通しで…大丈夫?」
「大丈夫。本当に感じてたらこんなに出来ない」
「それもそっか。さすが演技派の床上手」
「褒めてるの?」
「うん。にしても珍しいことしたね」

拭かれ終え、ご褒美と唇にキス。
すん。珍しいこと?終わった後は部屋から出てこないのに下にまで来たじゃん。エルヴィンとリヴァイ兵長が来た日。おまけに酒までぶっかけて笑い堪えるのに必死だった。

「彼のこと気になったの?」
「別に」
「あの後すげー大変だったんだよ!?金払ってあのクソ女削ぎ殺すとか言い始めたと思ったら今度は私が酒ぶっかけられてさ!」
「兵士長はチビで短気か」
「ちなみに明日彼来るから」
「そう。払ったんだから相手する」

あるのはセックスと金と情報だけ。
相手が求めるままに動いて声を出せばすぐ終わるのだから。そこに何かを感じてはいけない。
私は人形。そこには無しかない。

「ミケ」

もう一度口付けた。

「自由になっていいんだよ?」
「まだハンジに恩を返せてない」
「十分返してるじゃない、死ぬまでこうする気?」
「それでもいいと思ってる」
「自分の為に生きなさい」
「離れるなんて嫌だ」
「とにかく今日は終わりだから寝な?」

ハンジはミケを寝かせ、赤子をあやす様に一定のリズムで優しく叩く。
いつの間にか大人になった。
最初会った時はまだ小さくて。それでもそう育ってきたんだよね、あなたは私に言った。
『私を買って』って。
でもね?いるよ。大丈夫だよ。
あなたを愛してくれる人は必ずいる。
身体で触れ合わなくても伝わる恋がある。
その人と一緒に生きていきたいと思える愛に出逢える。

「…ふふ、寝ちゃった」

きっと、近いうちに。

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