【絶頂アイドル主人公】


『ハッピーメリークリスマス!この日をみんなで忘れられない日にしようね!!』
「レイちゃァァァん!!」
「メリークリスマァァス!!」
『うんうんイイ感じ!』

瞬く間に完売した絶頂アイドルレイちゃんのスペシャルライブチケット。
赤と緑のペンライトが光りまくる会場にはもちろんエルヴィン達もいた。全身レイちゃん一色のコーディネートで此処まで来るなんて彼等からしたら朝飯前。恥ずかしいなんざ微塵もない。見られる?上等だむしろもっと見て彼女の可愛さを焼き付けて頂きたい。何故なら俺達はレイちゃんへの愛で溢れ返ってるから。

新曲であるクリスマスソングに合わせてみんなのMIXがあちこちで炸裂する。相変わらずファンの熱は凄まじいものがあった。
曲が終わり彼女は大きく一礼する。

『ありがとうございます!今日はかなり寒いけど後ろのみんな大丈夫ですかー!?』
「大丈夫ー!!」
「新曲サイコー!」
『えへへ、嬉しいな!前のみんなー!?』
「全然寒くないレイちゃん大好きィィ!!!」
『私も大好きだよ!』
「!!大好き…だと…?チッ、生きてて良かったとはこの事か…!」

ペンライトを握り締めて目を見開く。
そこに差し出されるレイちゃんがプリントされたハンカチ。

「泣けリヴァイ、ハンカチはいくらでもある」

そんな事を言ってるエルヴィンだが彼もまた現在進行形で泣いている。
余談だがミケはマスターMIXの腕前を遺憾なく発揮しとにかく踊る。ハンジはとにかく奇声に近い大声で叫びまくる。残り2人は感無量になりとにかく泣くのがライブの恒例光景だった。

『ではでは!そろそろテンション最高潮でいきたいんだけどいいかな!?』
「いいよー!」
「うォォォめっちゃ滾るゥゥッ!!」
『オッケー!ではいつものいっきまーす!』

高らかに上がる人差し指はお決まりの合図。
静かになると同時に会場のテンションが膨れ上がっていく。

『レイちゃんにー!!?』

今年もほんの僅か、このライブが少しでもみんなへのプレゼントになりますように。

「「「「心臓を捧げよ!!!」」」」


*


「あ゛ーー…終わった」

会場近くのコンビニの縁石。
缶のお汁粉片手にレイは座っていた。化粧を落とした所謂すっぴん、裏起毛のジャージに手荷物はポケットに突っ込んだスマホと財布と家の鍵。
この姿で『レイちゃんですか!?』なんて声掛けられた事は一度もない。だって月とスッポン程に違うからとミカサに言われた記憶がある。

するとクラクション鳴らしながらバックしてくるワンボックス。ちょ、オイオイ轢き殺すつもりかよまだ縁石から退いてねぇから!大急ぎで退き止まったのを確認すると車に乗り込む。
このフルフラットに寝転がるのが至福。

「お疲れ様」
「大成功だったな」
「…大成功かぁ」
「どうしたの?」
「んー?なんかね、」

楽しんでくれたかな?
いい1日になったかな?
たまにさ、自分だけ突っ走ってんじゃないかって思っちゃう時があって。
だからたまにこうやって心配になる。

「レイはファンの顔を見てないの?」
「え?」
「今日だけじゃなくてどんな時でもそう、あなたを見てるファンはすごく楽しそうで生き生きしてる」
「そういう事」
「……そっか」

確かに、私も今日すっごく楽しかった。

「ユミルと話したんだけどクリスマスプレゼント」
「くれんの!?」
「今からばーちゃん家ですき焼きと、お前が欲しがってた巨人なりきりジャージ」
「感動嘘だろオイ泣いていい?」
「泣け泣け、今年もよく頑張りました。メリークリスマス」
「メリークリスマス」

十分過ぎる以上の素敵なプレゼントにレイは叫びながら転げ回るのだった。うるさいと2人に言われるまであと数秒。

Merry Christmas

クリスマスに限らず一年を通じてあなたが他の人に喜びを与えれば、それはどうにかしてあなたに返ってくる。
ジョン・グリーンリーフ・ホイッティア

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