その日は丁度七夕の夜だった。
もちろん私にはそういうのは関係なくて、
いつもどおりの仕事をただ淡々にこなしていた。

あれから一時間程経った頃、
仕事が一段落ついたときに後藤さんがやってきて

「なまえ!外凄いぞ!!ちょっと、外でないか?」
なんて珍しいことを言ったのでその言葉に屋根の上についてきてみれば、



漆黒のカーテンの上に散らばるスワロフスキーのような、



あたり一面の星、星 星。




それはおそらく天ノ川だと確信を感じた。
その時私は改めてあゝ、七夕だったなと実感したのだ。

「後藤さん、」
そう呼べばにっこりと笑った顔でこっちを向いた。
「たまには、こう言うのもいいだろ。」
「そうですね。すごく、綺麗です。」
他愛もない話をしながら空を眺める。

いつもは仕事で気にもしていなかった空が、宇宙が、
こんなに綺麗なんて思っても見なかった。
感激しながら二人で泳ぐ回遊魚のように時間を過ごす。

刹那、互いの手が触れてしまった。
その時年甲斐もなく照れてしまったのは秘密である。
どうやら恥ずかしかったのは私だけでなかったようで
珍しく顔を真っ赤にさせて固まった後藤さんが目の前にいた。

「っ・・・ご、ごめん!なまえ」
「いえ・・・こちらこそっ」

そしてどちらからともなく手を離す。
あゝなぜだろう、離れた手が、少し開いた距離が、名残り惜しくも感じてしまう。

「・・・・後藤さん」
思わず名前を呼んでしまう。その名前すら愛おしい。
あゝあゝこれは七夕の魔法なのか。

「ああ、やっぱり・・・もう無理だよなまえ・・・好きだ」
痺れを切らしたように後藤さんは甘い言葉を紡ぎ出す。

手が触れる。


そして、



私と後藤さんの距離は零になった。


「わ・・・たしも好き、みたいです。後藤さんのこと。」
後藤さんの胸の中で後藤さんの心音を聞きながら、
私はこの言葉を紡ぎ出した。


七夕の奇跡。
どうやら私は一瞬にして恋に落ちてしまったようである。




(夜空の下、僕たちは空に浮かぶ星のように、恋をした。)



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