Short story

不器用な夏の雨足

※コロナネタ/真夏の設定


 このご時世、放課後はまっすぐ家に帰るよう学校から言われている。最後に放課後デートをしたのはいったいいつだっただろう。
 同じクラスにいるにも関わらず、俺とお前の距離は他のクラスメイトとなにも変わらない。なにがソーシャルディスタンスだ、クソくらえ。

 俺は、我慢の限界だ!


「獄寺なんか機嫌悪くね? いつもだけど」
「うるせーな野球バカ! バカは大人しく野球でもしてろバカ!」
「悪口のオンパレードなのな〜」
「獄寺くん!? 落ち着いて!?」


 イライラする。そんな時に山本の野郎のへらへらとした顔を見ているとムカつくし、10代目も俺のせいで気を揉んでいらっしゃる。余計な心配をかけてしまったこともまた巡り巡って俺をイラつかせた。「クソッ」と吐き出した己への悪態が、マスクの中で温風となって自分に返ってくる。クソクソクソ。あついんだよ。

 宗教団体のように全員がマスクをつけて過ごす世の中になった。同じ制服に同じようなマスク。俺にはどいつもこいつも同じ顔に見える。マスクはいろんな感情を隠した。





「みんなまた明日〜」
「おーまたなー!」


 クラスの奴らが帰っていく。あいつも、いつもつるんでるオトモダチとやらと肩を並べ、俺たちに向かって手を振った。「また明日〜」じゃねーんだわ。なに普通のクラスメイト面してやがる。彼氏の俺を、野球バカとひとまとめにして?みんな?の中に収めやがって。上等だオラ。挨拶がわりに中指を立ててやった。あいつは「キャー。ヤンキーこわーい」と死んだ目で俺を見つめて帰っていった。


「獄寺くん…? なんかあった?」
「お前、彼女にありゃねーだろ。いくらヤンキーでもよ」
「うっせーよ…」
「…ウチで宿題でもする?」
「10代目ぇ〜…」


 めちゃくちゃ愚痴を聞いてもらった。





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