Short story

恋せよ乙女、青春の曲がり角

「おまえがななしか?」
「貴女は…あ、転校生の?」
「鈴木アーデルハイトだ」


 ひらりと動くスカートから覗く程よく肉付きのいい太もも。体のラインに沿ったデザインの制服が彼女の豊満な胸を強調する。女の私が見たって照れてしまうようなナイスバディ。これは男の子たちが放っておかないだろう。
 "粛清"を掲げたアーデルハイトさんと"風紀"を掲げている雲雀くんの一悶着は有名な話である。今でも風紀委員会は活動をしているし、アーデルハイトさんは生きている。咬み殺されていないという事実があるだけで、この話題は平和的解決を迎えたものとして並中生たちに記憶されることだろう。


「私に何か?」
「あぁ、何カップだ?」
「はい?」
「だからおまえの胸は何カップだ?」
「はい!?!?」


 先ほどまで私が視姦していたのがバレてしまったのだとしたら謝ろう。だからそんな、まじまじと見ないで欲しい。自分の両手で胸元を隠した私を見てアーデルハイトさんは腰に手を当ててやれやれという顔をした。堂々と張れる胸をお持ちの方には分かるまい。背中を丸めてしまいたくなるような心もとないこの胸元。走るのに邪魔だと思ったことはないし揺れているのかさえ不明。肩がこることはあってもそれは決して胸の重さのせいではないし、生理前に胸が張って痛いなんてそんな、アハハ。悲しい。


「失礼。不躾な質問だったな。答えなくてもいいが、雲雀恭弥には気をつけることだな。今日はその忠告だ。」
「雲雀くん?」







「何それ」
「豆乳だよ」
「牛乳嫌いじゃなかったかい」
「牛乳は嫌い。でもきな粉豆乳なら飲めるみたい」
「最近そればっかり飲んでるよね」
「雲雀くんには関係ないでしょ!」


 豆乳ときな粉がバストアップにいいと聞いた私は、豆乳きなこという画期的な飲み物を見つけた。これ一つで豆乳もきな粉も摂取できる。まさに一石二鳥!
 アーデルハイトさんの忠告は少し、いやかなり、私の脳内に電撃が走ったような感覚になったし、それと同時にサァーッと血の気が引いていくような感覚もした。
 「僕の欲望を吐き出す肉の塊」雲雀くんがアーデルハイトさんにそう言ったそうだ。雲雀くんに戦闘以外の欲望が備わっていたことにも驚いたけれど、アーデルハイトさんのナイスバディを見て、そんな発言をしてしまうくらい雲雀くんもオトコなのだということがわかった。
 途中アーデルハイトさんの後ろからひょっこりと登場した加藤さんは、「オレのアーデルをエロい目で見るのやめてくんない!?」と憤慨していた。一瞬私自身に向けられた言葉なのかと思ってドキリとしたけれど(それはそれでおかしい)どうやらそうではないようだった。後から付け加えられた「伝えといてね」という言葉の意味から察するに、あれは加藤さんの牽制だ。相手は雲雀くん。雲雀くんはアーデルハイトさんをエロい目で…へぇ〜?


「雲雀くんも男の子だったんだね」
「君には僕が女に見えてるわけ?」
「違います〜セクシーな女の子を見て鼻の下伸ばすこともあるんだなって思っただけです〜」
「いつどこで誰がそんなマヌケ面したって?」
「知らないっ」


 自覚がないなんてもっとタチが悪いよ雲雀くん。よりによって、雲雀くんの好みがナイスバディな女の子だとは思わないじゃない。おっぱいの大きさは遺伝なんだよ! お母さんもお姉ちゃんも貧相な我が家にあんな巨乳はどう頑張ったって生まれないんだから!


「は〜豆乳美味しい!」
「豆乳は栄養価が高いからたくさん飲むといい」
「雲雀くん最低。」
「さっきからなんなの?」


 知らない。知らない! アーデルハイトさんのようなおっぱいになれないことくらい知ってるもん。雲雀くんがおっぱいだけで人を好きになるようなタイプじゃないことも知ってるよ。でも、あぁいう女性らしい体型が雲雀くんの"性の対象"である事実。もしかしたら私は女だと認識されていないのかもしれない。







「あ、ヒバリくんだ。気をつけろ、乳揉まれるぜ」
「風紀が聞いて呆れるな。やはりななしが心配だ」
「君たちかい。あの子に変なことを吹き込んだのは。最近豆乳ばかり飲んでいるよ」
「ななしちゃんったら健気〜! おっぱいは豆乳なんかより揉まれた方が大きくなるって教えてこようかな?」
「は?」


 ななしの豆乳生活はもう少し続く。





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