Short story

あなたの隣の私が言うには

「今までいろんな人と付き合ってたけど、俺とは付き合わなかったね。」

「ツナはさ、好きとか嫌いとかの枠の中にいないよ。幼なじみだもん。」







小学生って勉強ができるとか、おもしろいとか、足が速いってだけでモテる。だからってわけじゃないけど、何をやってもダメダメだった俺は当然モテなかった。

俺の幼馴染のななしもクラスが変わるたびに好きな男の子が変わってて、バレンタインなんかいろんな男の子にあげてたよな。その中に俺へのチョコももちろんあるけど、もちろん義理チョコだっていうのは小さいながらにわかってた。


元気で教室の中で遊ぶより外遊びが好きな活発な女の子。俺は外では遊ばなかったから学校で一緒に遊ぶことはなかったけど、帰り道は絶対並んで帰ってた。家も隣。そういうものだと思ってたあの頃はなんとも思わなかったけど、いつからかななしと並んで帰るこの道が俺の特別になったんだ。


中学生になってリボーンがやってきて味気なかった俺の学生生活は、うんざりするくらい賑やかになった。その輪の中に当たり前にいるななし。


中1の夏、ななしが山本と付き合いだした。


俺はその時初めてななしのことが好きだったんだって気づいたよ。

京子ちゃんとは正反対の、ノリの良さだけで生きているような奴だけど、そのノリの良さとルックスでななしはモテた。

そんなななしの初めての彼氏が山本。

でもふたりはいつの間にか別れて友達同士に戻ってた。何があったかなんて聞いてないけど、聞きたくないけど、今まで通りすぎるふたりに拍子抜けしたのを覚えてる。


その後もコロコロと彼氏は変わり、いつどこで知り合ったのか他学年の先輩や他校の彼氏なんかもいたりして、どう考えても他の女の子よりそのスパンが短いものだから幼馴染として心配になった。新しい彼氏ができたって報告されて、なんでもないことのように別れたって報告される。もう驚きもしないけど。


「また彼氏?」

「うん。一緒に帰ろうだって。」

「最近一緒に帰ってないじゃん。」


ななしに彼氏ができるようになってから、俺の楽しみだった帰り道はななしのいない道になった。ななしの代わりにたくさんの友達と帰る帰り道は、とても賑やかで楽しいものだったけど、ななしがひとりいないだけでまるで白黒写真のようにしか記憶に残らないんだから、俺も大概ひどい奴だと思う。


付き合ったり別れたりの激しいななしについに痺れを切らして怒鳴り散らしたのが獄寺くん。高校2年生の時だったと思う。

獄寺くんはあぁみえて面倒見もいいし、真面目だからずっとななしの心配してた。


「いい加減にしろよてめえ!」

「はぁ!?誰と付き合おうがあんたに関係ないでしょ!?」

「お前の身勝手な振る舞いで俺がどんだけ振り回されてると思ってんだよ!」

「いつ誰が獄寺に迷惑かけたわけ!?」

「見ててイラつくんだよ、他の男にホイホイ付いてくんじゃねぇよ!」


あんなに壮絶な口喧嘩は見たことなかった。

そして公開告白まで見せつけられるとは思ってもいなかった。これはのちに俺たちの中でも結構上位にランクインする伝説級の思い出の1つ。

その場にいた俺たちはななしも含めて全員がアホみたいにポカンとしていて、遅れてやってきた羞恥心に耐えきれなくなった獄寺くんが「すいません10代目…!」と顔を赤くして走り去ったあとに、山本が爆笑しだしてつられてみんなで笑った。


「なに、今の…」


一緒に笑ってたななしだけど、その顔は見たこともないくらい大人びていて、そっと俺らの元を離れてどこかに行ったんだ。きっと半ばヤケクソで気持ちを伝えてしまった獄寺くんの元に行ったんだと思う。

あの時、怒っていたのが獄寺くんじゃなくて俺だったら。獄寺くんを追いかけるななしを引き止めていたら、何かが変わったのかな。いや、きっと何にも変わらなかったね。


その何日か後にふたりは付き合いだした。


獄寺くんとななしは、順調だったように思う。
でも獄寺君は何よりも俺を、そしてボンゴレを優先するから、そしてそんな獄寺君のことを理解していたからこそふたりは恋人同士をやめた。


今まで半年以上付き合いが続かなかったななしにしては珍しく、獄寺くんと3年以上続いたものだから、俺も自分の気持ちに蓋をして今ではなんでもないように接することができる。

蓋をした中身がどうなったのかは俺にもわからない。


「中1からほぼずーっと彼氏いたから今さらフリーになってどうしようあたし」

「いいんじゃない?たまには休みなよ」

「なんかツナ、やらしい…」

「ちょっとどういう意味で捉えてんの!?」


相変わらず俺の隣にはななしがいる。

幼馴染として。仕事のパートナーとして。


「今までいろんな人と付き合ってたけど、俺とは付き合わなかったね。」

「だってツナ告白してこなかったじゃない」

「告白してたら付き合ってたって?」


そんな勇気もなかった俺は、昔からずっとこの安定地帯をキープしたままそばにいた。


「ツナは好きとか嫌いとかの枠の中にいないんだよ」

「じゃあなんだよ」

「んーわかんない。特別?」

「奇遇だね。俺もななしは特別だよ。」



昔からずっと。



title by:花洩


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