04「報告します。雲の守護者と合流後、並盛へ向かう際ミルフィオーレブラックスペル電光のγと交戦。死者なし。無事、ボンゴレ日本支部に到着しました。また、どういうわけか、獄寺、山本両守護者は10年ほど前の姿で倒れていたところを保護。死んだはずの10代目とアルコバレーノリボーンも若い姿で存在しています。」
「………う"ぉおおおい!連絡してきたかと思えば一言目がなげえ!真面目か!」
「なによ、まだ拗ねてるの?」
「拗ねてねぇ!!!!」
黙って日本へ飛んだエミが、ようやく連絡をよこしたと思ったらこれだ。
業務連絡
確かに、大切なことではある。
それでも、一言目からこのお堅い業務連絡はないだろう。
エミの日本行きは俺以外の幹部は全員知っていて、ルッスーリアとベルフェゴールは見送りまでしてたらしい。そんな俺を散々バカにしてきた奴らを追いかけ回していたところにやってきたザンザスに鼻で笑われ、さらに大爆笑したクソガキ共を怒鳴り散らして疲れ果てた頃だった。
俺自身も散々暴れまわった後で落ち着いてきていたし、別にこのタイミングでエミが日本に行くと言いだすことは何も珍しいことでもなく、十分にあり得る範囲の出来事だった。ただひとつ、俺にだけ何も知らされていなかったっていうのが腑に落ちねえ。止まるわけもないし、止めるような男だとは向こうも思っていないだろう。
「一言くらいあってもよかっただろ」
「ごめんねスクアーロ。そっち丸投げしちゃって」
俺が言いたいのはそういうことじゃねぇんだけどな。
まぁ、こいつにそこを言っても治らねえのはよく分かってる。真面目で仕事のできるいい女だ。そんなところがこいつの良さなんだろうな。
「で?死んだ沢田が生きてるってのはなんの冗談だぁ?」
「守護者が10年バズーカで次々に入れ替わってるのよ。綱吉もここにきた時、棺桶に入ってたって。」
牛ガキのせいで10年前と入れ替わることは最早珍しいことではなくなっていた。未来と過去が混ざり合うことが科学的にどうのこうのはよくわかんねえが、そんなことができてしまう世の中にまでなってしまったってことだけはわかる。
しかしあいつらも運が悪い。何もこんな時に10年後に来なくてもよかったのにな。
5分で元に戻るはずの10年バズーカの効力は消えず、ガキどもはこの時代に残ったままだ。そして、この時代の戦いにすでに巻き込まれ始めている。
「それでね、スクアーロ…私…」
「そっちに残るんだろぉ」
「………うん」
そう言うと思ってた。
そうでなきゃ、エミじゃねぇ、なんて思っちまうくらいには俺もお人好しになったもんだな。
相変わらず世話焼きで、ガキの面倒が好きな奴だ。
そういうところが母親にそっくりで、たまにザンザスは苦々しい顔をする。きっと自分のガキの頃でも思い出しているに違いない。
俺はあのお節介に救われた。
だからエミのそういうところは嫌いじゃねえが、それがいつかエミの首を絞めることになるんじゃないかと思う。ただ、もしそんなことになったとしても本人は気にしないだろう。母親がそうだったようにきっとこいつもそういう生き方をするんだろうなと思ったのは、もうだいぶ昔のことだった。
「こっちは落ち着いてる。お前はそっちでガキどものお守りしてろぉ」
「ふふふ、ありがと。そっちはよろしくねスクアーロ作戦隊長」
「ぺーぺーのお守りはごめんだぁ!」
なんとも穏やかなやりとりだった。
遠く離れた場所にいるお前が一体どんな顔して話しているのか。
それが容易に想像できてしまう俺にも、そして俺がどんな顔して話しているのかきっと分かっているお前にも、なんだか笑えてきてしまう。
「ザンザスに伝えといてね」
「殴られんじゃねぇか!」
「大丈夫よ。私が伝えたってスクアーロは殴られるんだから。」
何が大丈夫なんだ。大丈夫なわけあるか。お前がいないってだけで、機嫌の悪いボスは手加減を知らねえ。ぺーぺー共もいつにも増して言うこと聞かねえし。こんな非常事態でもヴァリアーの中は大して変わらねえ。それよりも副隊長ひとりいないだけでどんな平和な世界でも均衡を崩すような部隊であることをあいつは少し理解したほうがいい。
守るべきは小さな世界
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