04何故こんなことになっているんだっけ。
そもそもの発端は沢田綱吉達が行方不明になったということ。加えて【独立】暗殺部隊であったヴァリアーは今回の件の処分を受け、独立の名を返還。その所属を9代目直属とすることで存続の危機を免れた。なんだ、名前を変えただけじゃないかと、9代目も人の子だ、息子には甘いのだ、と思われることだろう。
そんな甘い人じゃない。
9代目直属となったヴァリアーの初めての任務が日本の後継者候補とその守護者達の安否確認だなんてやっぱり9代目はわからない。
「君に意志はないの?」
「……………」
5つ以上も歳の離れた中学生にこうも言い負かされるのは趣味じゃないんだけど。言うことは中学生らしからぬ生意気ぶり。しかし口数少なく紡がれる彼の言葉は何故か聞き逃すことができなくて、多くを語らないその言葉は逆にすとんと心に響くようだった。
意志がないわけじゃない。ただその意志はボスであるザンザスが絶対的であるということ。そうしなければいけないだなんて思っているわけでもないし、ザンザスが全てだとも思っていないけれど、やはり周りから見たらそう見えるくらいには私達ヴァリアーにとってのザンザスというボスの存在は大きくてかけがえのないものなのだと思う。
ザンザスに反論することだって喧嘩をすることだってある。でもそれはよくよく振り返ってみれば兄妹の喧嘩のようなものだったなと思ってしまう。
ヴァリアーの方針についてザンザスに何か意見をしたことはないし、反対をしようと思ったこともない。
「君はなんでそんなに戦うことが好きなの?」
「目の前に面白そうな人がいたら咬み殺したくなるものなんだよ。」
「誰かさんそっくりね。」
なんだか彼はスクアーロに似ているような気がしてならない。ディーノの名前を聞いて嫌そうな顔をするところ、目の前に強い人がいると居ても立っても居られないところ。話し方は全く違うのに中身はほとんど同じようなものだ。これをどちらに言っても嫌そうな顔をするのだろう。
そんなことを考えていたせいで気が散っていたというのは言い訳にしかならないのだけれど、本当にそうなのだ。ちょうど思い浮かべていたのも血気盛んな同僚なものでその影響もあったと思う。そう、半分はスクアーロのせいにでもしておこう。
こちらにその気がないことをこんなに主張しているというのに止まらない攻撃は、確かに雲戦の時よりもレベルが上がっている。短期間で成長したのは経験値を積んだからだ。
いなしていただけだった私がほぼ無意識でトンファーを弾き返したところでエース君は初めて私から距離を取り攻撃を止めた。しまった、と思ったところでもう遅いだろう。とてもとても楽しそうで嬉しそうな顔をしてこちらを見ている彼に、火をつけてしまったのは間違いなく私。
「抜いてもいんだよ、それ」
「そしたら君斬られちゃうよ?」
「…君じゃないよ、雲雀恭弥だ。」
もう何を言っても聞いてくれなさそうだなぁ。
別に手合わせをするくらいいいだろう。別に殺すわけじゃないし向こうがそれを望んでる。でも彼くらいそこそこできる子相手に手を抜くのはなかなか疲れるということを彼はわかっているのだろうか。
ため息をもらしながら剣を抜く私を見て今度こそ全力で飛びかかってくるエース君もとい雲雀恭弥。
ディーノはなかなかいい師匠をしていたようで昔馴染みとしては嬉しい限りである。へなちょこだったディーノが一丁前に指導をする立場になっている。慕われてはいないようだけど。それもなんだか父様を小馬鹿にしていたスクアーロに似てるなぁ。
知らない世界
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