medium story

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「武くんっ…!」





いてもたってもいられなかった私は、どこに武くんがいるのかもわからずに走っていた。




試合は並盛中学校の勝利で幕を閉じた。



武くんの一言で、落ち込みかけていた選手たちの闘志は再び燃え始めたのだ。追われる側だというのにそれを楽しむような彼らに、もう負けるという不安はなかった。


自分を信じて、仲間を信じて戦う彼らは強かった。






会えたらまず何を言おう。優勝おめでとう?それとも3年間お疲れ様でした?


言いたいことはたくさんあるけれど、何から言えばいいだろう。


そもそも会えるかもわからないのに、それでも走るのをやめないのはなんだかこのまま行けば武くんが見つけてくれる気がするから。



「名前!どこまで行っちまうつもりだ?」

「っ!」




ほらね。やっぱり武くんはすごいね。




こんなに人が大勢いるのに、間違えることもなく私を見つけ出してくれる。振り返れば泥だらけのユニホームで無邪気に笑う、私の大好きな武くんがいた。




「武くん!武くんあのね…!」

「待った!待った!ストーップ!」

「えぇ!?」




話したいことがたくさんあるのに!今勢いのまま全部伝えてしまおうと思ってたところなのに!


完全に勢いを殺されてしまった私は走ったせいで乱れた息を整えるので精一杯だった。




「なー名前。すっげー会いたかった!」

「え?」

「名前は?俺に会いたかった?」





とってもとっても会いたかったよ。






そう伝えたらなんだか無性に泣きたくなって。


悔しくて泣きそうになることはあったけど、誰かに会いたくて泣いたことなんて一度もない。

たった1ヶ月会えなかっただけでこんなに寂しいなんて知らなかった。こんなに私の中で武くんが大きくなっていたなんて知らなかった。





「名前すきだぜ」

「わ、私も、大好き〜、うっうぅ〜」

「泣くなよ!笑顔ーって自分で言ったくせに!」





涙と一緒にいろんな感情も流れていって、最後に残ったのは武くんが大好きだってことだけだった。それをようやく言葉にして伝えた時には武くんはとってもびっくりしていたけれど、少し顔を赤くさせてとっても優しく笑ってくれた。初めてみる武くんの照れた笑顔はなんだか可愛くて、いつも武くんが私をからかって遊ぶ理由が少しわかった気がした。




「武くん、あのね、だいすき!」

「いや、俺のほうが大好きだぜ?負けねぇ!」

「そ、そんなことないよ?私だって負けないもん」

「〜〜!(やべぇ、素直な名前も超可愛い!このまま連れて帰りてぇ!!)」





何をしてても可愛い俺のチアガール。


これからも俺だけの専属チアガール!




【完結】






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