medium story
ＰＡＧＥ：９
今まで武くんにはたくさんドキドキさせられてきた。
男の子に慣れていない私は、武くんの隣に並ぶことだって初めは緊張してた。今だって全く緊張しないのかっていうとそんなことはなくて。
まだ友達だった頃に大好きだったあの笑顔が、私の隣にあることがとても嬉しくてとてもドキドキする。
キラキラした笑顔、いたずらっ子みたいな笑顔、穏やかな優しい笑顔。
いろんな笑顔の武くん。
野球をしている顔、勉強している顔、居眠りしてる子供みたいな顔。
笑顔以外もいっぱい見てきた。
キスをして、思考回路が停止して、いつもはうるさい心臓も多分あの時は止まってた。だって、音が何も聞こえなかった。
だけど、武くんの小さな「ごめん」と、泣いてしまいそうな表情に胸がきゅーっと苦しくなった。
目の前に大好きな人がいるのに、手をあげたら触れられる距離にいるのに、かばんを持つ両手は金縛りにでもあったように動かなくて。
武くんには笑ってて欲しいのに、今武くんをこんなに悲しそうな顔にさせたのは間違いなく私で。
私は武くんから笑顔をもらうばっかりで、こんな時どうしたら武くんが笑顔になってくれるのか全然わからない。
謝らなきゃいけないのはこっちの方なのに。
そんな顔させてごめんなさい。
でも武くんがどうして悲しそうな顔をするのか私にはわからないから。
なんて言ってあげたらいいのかもわからないから。
どうしよう。
恋の教科書が欲しい。
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