medium story

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武くんは私が恥ずかしがっているのを見て、きっと喜んでる。りかちゃんに言ったら「爽やかな顔してドSかよ…」って言ってた。

ドSってもっと怖いイメージだから(よくわかってない)たけしくんは怖くないし違うと思うんだけど、私を恥ずかしがらせることは楽しんでいるように思います。



今だって、わざと私に遊んでくださいって言わせたもん!絶対!

ここで、もっと大人の女の人っぽく『そういう意味だったんだけど、伝わりにくかったかしら?』とか言えたらかっこいいのに!キャラじゃないけど…。




そんなわけで元々赤かった顔がさらに赤くなったのが自分でもわかった。顔から火が吹きそうなくらい熱い。




両手で握りしめるいちごオレの紙パックが、とても冷たくて気持ちよく感じるくらい全身から熱を放出してるんだと思う。




私が敬語だったことがおかしいのか、真っ赤な顔がおかしいのか武くんはずーっと笑ってる。


でも目がなくなっちゃうくらい細めて大きな口を開けて全力で笑う武くんは、やっぱり私の大好きな武くんで、私の大好きな笑顔だから。



自分の真っ赤な顔を見られるのは恥ずかしいけど、顔を隠したら武くんの笑顔は見られなくなっちゃうし、どうしたらいいかわからない。




「っはー、おもしれー!また顔真っ赤だー!」

『も、もう!』

「そんな顔すんなって!おりゃ」

『わっ!』




まだ赤い顔をからかうから少し拗ねてみたんだけど、武くんには全く効き目がないみたいだ。


そのお返しに髪をくしゃくしゃにされてしまった。そんなに乱暴にではないけど。




『前髪がどっかいった…』

「お?わりわり!直してやるよ。」

『え、いいよ!自分で…』

「じっとしてろって。」




うっ。何も言い返せない。


武くんは笑顔でいる時が多いから、こういうふとした瞬間に真面目な顔になられると、ドキッとする。不意打ちというか、心の準備が整わないというか。



前髪を直すために私の正面に回り込んだ武くん。


真正面から見つめられるのってとっても照れるから、お願いしますとつぶやいて目をつぶってしまった。武くんが今、どんな顔をしているのかも気になるけど、この距離でそれを見れる程、私の心臓は強靭には作られていないみたい。


だってほら、武くんの手が少し前髪に触れただけなのにこんなにバクバク鳴ってるもの。








『お願いします…』




そう言って名前は目を閉じた。


や、やっべー!おいおい、まいったな。可愛い、反則だ。お願いしますってなんだよ。いや、俺が直してやるって言ったんだけどな?



いつまでも見つめていたいけど早く前髪を直してやんねーとかわいそうだしな。


そう思ってそっと触れた彼女の前髪。


見た目通り柔らかくて少し触ればするんと元の位置に戻っていく。俺の手が髪に触れるたび、ピクッと動く肩とか、赤さが引かない頬とか、ギュッと閉じる瞳や唇。



その全部に触れたくて、もうそろそろ本気でやベーんだって気が付いた。



今、名前が目を閉じててくれてよかったって思うぜ。

名前が顔を赤くするたんびに笑ってからかう俺だけど、今こいつのことバカにできねーくらい俺も顔赤えわ絶対。



『武くん、ま、まだ?』

「ん?もーちょいなのな」




もう前髪は元通りだけど。


俺の顔が元通りじゃねーのな。




でもそろそろ図書室に戻んねーとな。

戻ったら集中できる気がする。

夏休みのためっていう目標ができたからな。




さっきまで見えてた名前のおでこは、今は前髪でいつも通りに隠れてる。

俺はその前髪をちょこっとどかしてそこに口付けた。わざとチュッて音もなるよーにな。


どかした前髪を元に戻して撫でてやる。そんで、はい、終わりって言ったら真っ赤な顔で口をパクパクさせてる名前と目が合った。




「ほら、図書室戻ろうぜ!」

『〜〜〜〜!』

「(めっちゃ、かわいー)」





手に持ついちごオレはぬるくなった











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