medium story

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「……………」

『……………』

「……………」




ひたすら無言が続く。

別に喧嘩をしたわけでもないし、気まずいってわけでもない。



ここは図書室。



もともと静かにしなきゃ行けない場所であるし、そもそもテスト勉強をしにここにきたわけで、会話はなくてもいいはずだ。



周りにも勉強をしにきてる生徒はいて、その人たちのためにもここはおとなしくしていなければならない。



ただ、そろそろ限界だった。


俺はもともと勉強は苦手だし、集中しちまえばできるんだけど、集中するまでがなかなかな。




それにせっかく名前と一緒に居れるのに、教科書と睨めっこっていうのはねーよな、うん、ねーよ。




そんなわけで、さっきから俺は1ページも進んじゃいない。

シャーペンは握って、問題を解くふりをしながら見るのは名前の顔。



垂れてきて邪魔だからと、髪を片側だけ耳にかけてる姿がすっげー大人っぽく見える。


時折、問題につまづいたのか口を尖らせて考えるそぶりを見せる。その尖らせた唇から目が離せなくなる。もはや、勉強どころじゃねえ。





「なー」

『どうしたの?分からない問題でもあった?』




控えめに、だけど確実に名前の意識を俺に向けて欲しくて声をかける。


大きな声は出せないから、普段よりだいぶ抑えめだ。それでも名前は、すぐに下げていた視線をあげて俺を見てくれる。

それだけで俺は嬉しかった。





「いや、そういうんじゃねえんだけどさ。休憩しね?」

『………そうだね。外の空気、吸いに行こう』





こうして訪れた屋上。




図書室は飲食も禁止だったので、紙パックのジュースを買って屋上まで上がる。



いつもは部活をやる生徒の声がたくさん聞こえるグランドも、しんとしている。


いつもの場所に二人で腰掛け、買ってきたジュースを飲んでのんびりと空を見上げて時間を潰す。




『武くん、勉強飽きちゃった?』



くすくす笑いながら、名前は尋ねる。


きっと、俺がぜんぜん問題を解いてないのに気づいてる。


「飽きたわけじゃねーけどさ」

『ふふふ、本当に?』




名前はまだ笑ってる。



「ずっと名前のこと見てたから、飽きはしなかったのな」

『た、武くんってば…』




名前が、いつまでも笑うから仕返しにそう伝えれば思った通り顔を赤くして俯いてしまう名前。あぁ、本当に可愛い。




「ただなー。目の前に名前がいんのに話せねぇってのがなー。」

『図書室でお喋りしてたら他の人の迷惑になっちゃうよ。それに悪い点とって夏休みの宿題が増えちゃったらたくさん遊べないよ?』

「いい点とったら名前がたくさん俺と遊んでくれるって意味か?」





この流れだったらそういうことにしてもいいよな?たぶん名前は、自分とって意味で言ったわけじゃないと思うけど。


その証拠に、顔を赤くさせて『へ!?あ、あの…ツナくんとか、あ、もちろん、あの、えっと…』とか言って騒いでた。




あーあー、好きだな。

1年近く付き合ってる俺らだけど、お互い部活があったし恋人らしい事って言ってもそんなにしてない。


たまに一緒に帰るくらい。


それも名前が引退してしまえば、時間も合わないしで最近は一緒に帰れてない。




いわば、名前不足だ。

あとは、俺の我慢もちょっとずつ限界が見えてきた。



これに関してはよく頑張ってる方だと思うぜ。他のやつらの話なんか聞いてっとな!



ただ、こんだけいちいち可愛いと俺の我慢も水の泡っつーか、なんつーか?可愛いお前が悪くね?と、言ってしまいたくなる時もたまに、いや、結構あったりして。





「名前は、俺と遊んでくんねーの?夏休み。」

『あ、あの…、私でよければ遊んで、ください』

「はははっ、敬語なのな!」





ほらな、可愛くてしょうがねぇ。










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