medium story
黄色い小鳥
「名前!名前!」
『なーに、ヒバード』
「スキ!スキ!」
『わたしもすきー!』
応接室
誰もが恐れて近寄ろうとしないこの部屋で、黄色い小鳥と戯れる風紀副委員長がいた。
ヒバードと呼ばれた黄色い小鳥は簡単な言葉ならすぐに覚えてしまう頭のいい小鳥だ。
黒曜中とのいざこざを解決(暴力で)しに出掛けた雲雀が、ボロボロになって帰ってきた時に一緒にやってきたのだ。
『どうしたの!?その小鳥!』
「知らない」
『知らないわけないでしょ!?頭に乗せちゃって』
「知らない」
委員長はボロボロなのに、頭の上に乗っている小鳥が可愛らしくて笑ってしまったのはしょうがないことだと思う。
人懐っこいヒバードはすぐにわたしにも懐いてくれた。哲のところにはお腹が空いた時にしか近寄らないけど、わたしのところには用がなくても遊びに来てくれる。
わたしも頭に乗せられるかな?
パタパタと近寄って来てくれるものの、いつも肩か差し出した手の上に乗ってしまうヒバード。
一度でいいから委員長のように頭の上に乗せてみたい。
『ねぇ、ねぇ!』
「………なに」
え、すっごい機嫌悪いんですけど。
ヒバードを手の上に乗せたまま振り返ったら、ヒバードは飛び立ち委員長の頭の上に降り立った。
なぜか機嫌がよろしくなくてムスっとしてる委員長の上に、可愛らしいヒバードが乗っているだけで和む。常に頭の上に乗せてたら、委員長を怖がる生徒も減るかもしれない。風紀委員のマスコットキャラクターにしたらいい。
『ずるい』
「なんのこと」
『わたしも頭にヒバード乗せてみたい!』
「乗せなよ」
簡単に言うけどね、自分でできるならとっくにやっている。
ブスくれるわたしにため息を一つ吐いた委員長は机から立ち上がりわたしの方へやってくる。
「頭出して」
『乗せてくれるの?』
「ノル!ノル!」
ヒバードを両手で包み込み名前の頭の上にそーっと乗せてやる。
目を瞑り固まる名前を見て、雲雀が微笑んだのはヒバードしか知らない。
雲雀と違って髪が長くサラサラしているせいか、真ん中に乗せてやっても滑って落ちそうになるヒバード。
手を離し、ずれたヒバードを中心に戻す行為を何度か繰り返したところでヒバードは羽ばたき雲雀の頭の上に戻ってきてしまった。
「君の頭じゃダメみたいだね」
『えー……』
羨ましそうに頭上を見つめる名前の頭をポンポンと叩いてから、残っている書類を片付けるために机へと戻っていく。
頭の上の小さな温もりになるべく振動がいかないようにいつもより少しゆっくりと。
『やっぱりヒバードは委員長の頭の上にいるのが1番可愛いね』
「それ僕のこと馬鹿にしてるの?」
「ヒバリ!名前!スキ!」
『あ、ヒバードが二股発言した!』
「チガウ!チガウ!」
応接室
誰もが恐れて近寄ろうとしないこの部屋に、今日も可愛い小鳥のさえずりと少女の笑い声が聞こえる。
素直じゃない僕の気持ちを
代弁する黄色い小鳥
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