medium story
君がいない世界は無色だ
「名前!もう少し考えて行動しろ」
『え、急になに!?』
「名前以外に誰が委員長をあそこまでイラつかせることができる奴がいるっていうんだ!」
ねぇ、それひどくない?
『でね!哲ったら終いには笑うな!とか言ってくるんだよ、酷くない?人権無視じゃない?笑うなって、わたしは歩く顔面凶器かってーの!』
「先輩、それウケる!」
「ちょ、山本!」
屋上で昼食を食べていたら飛び込んで来た名前先輩。
いつもは応接室で食べるみたいなんだけど、草壁さんと喧嘩したからってここに来たらしい。
名前先輩は風紀委員の女子副委員長
雲雀さんの両端を固めるのが草壁さんと名前先輩で、最初はあの風紀委員だし先輩も不良で怖くて容赦のない人なんだと思ってたんだ。
でも名前先輩は意外に気さくで話しやすい先輩だった。いつも元気で明るくて、雲雀さんの餌食になる生徒を少しでも減らす為に一生懸命仕事をしている。
雲雀さんと草壁さんとは幼なじみなんだって。
「つーか、おまえ雲雀に何したんだよ」
「そーだなー。ヒバリが機嫌悪りぃのはオレらも困るし、早めに謝っちまった方が楽っすよ?」
『だから何もしてないってば。だいたい今日は朝から他の委員の人たちと見回り行ってて委員長とは話してもいないし』
それだ!!!
なんとなく、草壁さんの言わんとしてることも分かってしまったオレ。
先輩と一緒に頭を悩ませる山本と獄寺くんには申し訳ないけど、これは完全に先輩のせいではないね。
あーでも、先輩が鈍感すぎるのかな?
それとも雲雀さんが大人げないのかな?
頬を赤らめて気持ち悪い笑顔を浮かべている風紀委員を見ていたら、どうにもこうにもイラついてとりあえず殴って山積みにした。
ヘラヘラヘラヘラ…、ただでさえ暑苦しい顔ばかりの風紀委員がそんな笑顔を浮かべていたら誰だっていい気分はしない。
だから沈めてやったまで。
あの子と話すとすぐこれだ。
この間の身だしなみ指導も、なんだかイラつくから身なりが整ってない奴がいたらボコボコにしてやろうと思っていたのに、あの子の指導のせいで思う存分暴れることができなかった。つまり、不完全燃焼。
今日は草壁と喧嘩したから草食動物達と昼食を食べるとメールが来た。
とりあえず草壁を殴って廊下に捨てておいた。
書類を片付ける気にもならない。
きっと運動不足だ。
雲雀さんが自分が機嫌が悪くなる理由に気が付くまでは、草壁さんと先輩の喧嘩は続きそうだ。
「名前先輩、雲雀さんと喧嘩したわけじゃないんだし、午後は応接室いってあげてくださいね?」
『そうだね。わたしがいない日って必ずと言っていいほど哲が咬み殺ろされてて、書類がぜんぜん片付いてないんだよね』
あぁ、草壁さんと喧嘩したからここにいるって分かったら草壁さんの命はないだろうな。(もう遅いです、沢田さん)
草壁さんも雲雀さんの為を思ってしたことがまさかこんなことになるだろうとは思いもしなかったんじゃないだろうか。
1番哀れなのは間違いなく草壁さんだ。
(廊下に転がってるの哲?)
(邪魔だから寄せといて)
(もう寄せた!)
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