medium story

小さな希望







「わざわざ貼り出す意味あるのかな?」

「晒し者なのなー」

「趣味悪りぃっすよね」



















2日間に渡るテストは無事終わり翌日にはまたいつも通りの日々が戻ってきた。

下駄箱の目の前の廊下だけがいつもと違う賑わいを見せていて…。





「うわ俺156位」

「いいじゃねぇかツナ!俺なんか230位だぜ」

「おめーはちったぁ勉強しろよ!」

「獄寺は相変わらずなのなー」




貼り出されていたのはテストの順位。高校と言うのは中学とは違いなかなかプライベートでデリケートなことを大っぴろげにするらしい。



中の中であるツナと下の上の山本。

上の上の獄寺。



あんまり代わり映えのしない順位だが、初めてのテストだけあって上位陣の名前が気になる生徒達で下駄箱前はいつまでたっても空く気配はなかった。




「あ、電話。…もしもし?」

『あー、ツナ?順位貼り出されてるだろ?』

「よく分かったね」

『昨日担任に言われた。ツナはどうせ壊滅的な順位だろ?』

「決めつけんなよ!中の中だし…」

『ま、いいやー。あたしの順位は?』




あー、ちょっと待ってと呟き人だかりから順位を覗き込む。



「あったぜ、ツナ」

「あ、本当だ。名字も相変わらずだな」






総合順位5位ーー名字名前






「5位だってさ」

『さんきゅー』




用件はそれだけだと言わんばかりに切れた電話。



教室へと歩みを進めた俺達は他の人達同様テストと順位の話をしていた。




「やっぱ名字はすげーのな」

「あいつ学校こないくせになんであんな頭いいんだろう」

「しかも俺等のノート見てだぜ?」





そう、名字は何故か勉強ができる。

あれだけ学校に来ないと勉強にもおのずとついていけなくなるものだけど、名字が10位以下になったことはないらしい。(本人曰く)



だから先生達もあまりうるさく言わないんだ。




「じゅ、10代目……」

「どうしたの、獄寺くん」

「5位の奴ってまさかあの男女ですか?」

「男女って…」




まぁ、確かに名字は口が悪いし男勝りなところがある。バレンタインなんかは俺なんかよりずっともらってるっていつか山本が言ってたっけ。



名字が学校にきたのはテストがあった2日間だけだったけど、その間も獄寺くんとは喧嘩ばっかりだった。喧嘩と言っても獄寺くんが一方的に噛み付いて、名字が容赦なく叩き潰す感じであんまり相手にはされてなかったみたいだけど。



冷静にばっさりと切り捨てる名字のほうが一枚上手なように見えた。



「なんなんすかあいつ」

「すげーよな!名字って」

「そうじゃねぇよ!俺はいけすかねぇっすね。女のくせに態度でけぇし」

「まぁ、名字は昔っからあんなんだからなー」

「オレも初めて会った時は怖かったな」





理不尽だし横暴だし俺様だけど、学校にこない理由も実は頑張り屋なところも知ってるんだ。オレだったらくじけてるようなことでも名字は弱音を吐かない。


いつも元気で少し…いや、だいぶはちゃめちゃな奴だけどいい奴なんだ。




獄寺くんにも名字がいい奴だって伝わればいいんだけどな。













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