medium story
小さな商店街
「っふぁー…」
「10代目、寝不足ですか?」
「んー昨日ちょっとね」
昨日名字のうちにノートやプリントを届けた俺達は、野菜と引き替えに店番を押し付けられた。そもそもノートのお礼でくれたはずの野菜を脅し文句に使って店番を手伝わせる奴なんて名字くらいしかいないと思う。
まぁそれもいつものことで慣れた手つきで店番をこなし夕飯をごちそうになったんだから仕方のないことと言ったら仕方がない。
その後なんだかんだとチビ達の相手をして寝かしつけた後、最近のクラスの様子などを話しているうちにあっという間に日付が変わってしまった。
「10代目に店番を!?なんて野郎なんだ名字…!」
「まぁまぁ獄寺、そう怒んなって。名字がこんななのはいつものことだしよ」
「だいたいてめえ1人で引き受ければ10代目はおうちへ帰れたんだろうがよ!!」
「そこまで考えてなかったのな」
「この野球馬鹿が!」
テスト期間と言っても2週間も前から勉強を始めるのは極少数の限られた生徒だけで、運動部はまだ1週間は部活があるし俺達みたいな帰宅部はいつもと何も変わらない。
「ちょ、獄寺くん落ち着いて!」
「無理です10代目!」
「おもしろいのなー相変わらず」
俺達もいつも通りだった。
『ちょっとそこの高校生!おまえだよそこの銀髪』
「…?…んだよ」
『あんた野菜食ってないだろ。うちの野菜買ってけ』
「はぁ!?誰が買うかよ、んなも…ぐうぉ」
10代目を無事おうちまでお見送りした後、商店街の本屋に寄った俺は自宅を目指し商店街を突き進んでいた。
そんな俺の口に突然突っ込まれたバナナ(ご丁寧に皮まで剥かれた)。
「いきなり何すんだてめえ!!」
『うまいだろうちのバナナ』
「…っやろう!」
わなわなと拳を震わせる獄寺をみてなんとも嬉しそうな笑みを浮かべるのはここの商店街に軒を連ねる八百屋の看板娘。
『はいお金』
「ねーよ、んなもん」
『は?』
は?と言われても。
お金がないのは本当のことだった。
「本買っちまったから所持金26円だ」
『……バナナ返せー!!』
「てめえが勝手に口に入れてきたんだろ、知らねえよ!」
『食い逃げ野郎め』
「名前ちゃーん、キャベツもらうわね〜」
『あ、おばちゃんお金そこ置いといて』
「ふふふ、いつも元気ねー」
「てめっ…、いい加減離せよ」
『くそっ、おまえ並高だろ?次会うときは金持っとくんだな』
「もう二度と会う事なんてねぇよ!!」
なんなんだあの横暴な店員。
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