medium story
裏庭
『ちょっと裏庭行ってくるわー』
「雲雀さんに見つかんねーよーにな」
『はいはーい』
と言うわけで一服しに裏庭にやってきたんですが、非常にまずい状況でございます。
気まずさはMAXです。
この角を曲がれば裏庭で、古びたベンチがある。あたし達が屋上の次くらいによく行く場所だ。他の生徒はあまり来ないしサボリ場所にも打ってつけなのだが――
今日は先約がいたようです。
角を曲がろうとした時聞こえた「あの…いきなり呼び出してすいません」と言う女の子の声。
どっからどう見ても、告白の現場なのだろう。
覗きの趣味はないので引き返そうと歩を戻した時に聞こえたのは「あぁ」と言う素っ気ない返事。
その声に聞き覚えがありすぎて、戻ろうとした足は完全に止まってしまった。
獄寺だ!ど、どうしよう…!
おもしろすぎて気になってしまう。モテるのは知っていたが、彼女ができたなんて話は聞いたことがない。
頻繁にこうゆうことがあるのだろうか。
もしかしたら知らないだけで、彼女の1人や2人はいるのかもしれない。
そんなことを考えていたら、なんだか急に寂しくなった。知らない獄寺がいる。
中学の頃から仲がよかった。獄寺の影響でたばこを吸い始めた。
なんでだっけ?
「すきです。付き合ってください」
告白はいよいよ終盤。
あとは返事をするだけだ。
急に怖くなって走り出した。
教室への道のりを走り角を曲がった所で、誰かにぶつかり「おっと」と支えられ転ばずにすんだ。
『山本ぉー』
「なんだ名前なのな。遅いから雲雀にでも捕まってんのかと思ったぜ」
どうやら遅いので迎えに来てくれたみたいだ。
優しい友人を見たらなんだか泣けてきた。
「おい名前なんかあったか?」
『獄寺が…獄寺が告白されてるー。取られちゃうー!』
と、言って涙目。
「おいおい」
とあやす山本。
「名前それ、ヤキモキだろ?そろそろ気付いてもいんじゃねーか?」
気付く?
そんな言われ方、あたしが獄寺を好きみたいじゃんか。
獄寺とは友達で…。
1人で吸う獄寺と一緒にいるうち、自分も吸うようになったたばこ。
たしかに興味本位から手を出した物だったが、あたしもたばこを吸えば、獄寺と一緒にいる時間が長くなると思ったのも事実だ。
あれ?あたし知らない間に、獄寺と一緒にいたかったの?
知らない子と付き合って欲しくないなんて、おもちゃを取られそうな子供みたい。
『あたし…すきなの?』
「おう、すきだぜ!」
なんだか山本に言われたら、すっきりして涙なんか引っ込んだ。
『ありがと山本!あたしあんただいすきだっ』
「なんだよいきなり」
気付かせてくれて、ありがとう。
きっとツナも気付いてんだろーなー。恥ずかしいな…!!
prev|next