medium story

大きな迷惑



 





『お、やっときたか。遅せーぞツナ』

「こっちは学校だったの!!」

「遅せーぞぉー!ツナ!」





























はい。沢田綱吉、高校1年生です。同級生にこそダメツナと言われなくなったものの、小学生には相変わらず馬鹿にされてます。





『相変わらず馬鹿にされてんだな』

「おまえがそんなだからだろ!?」

「まぁまぁツナ落ち着けって。名字のこれは直んねーよ」





俺と山本は放課後、学校に来ない名字の机の中に乱雑に突っ込まれていたプリントをかき集め教科書の範囲を確認し、範囲分のノートに抜けがないかまで確認して名字の家までやってきた。





商店街のそれなりに真ん中に位置する八百屋さん。



そこの看板娘が名字だ。



おばあさん(って言うと怒られる)とまだ小さい弟妹達4人と暮らす名字は中学の時からろくに学校に来ていない。





『ばぁちゃん1人じゃ店心配だし』

「まだばぁちゃんなんて歳じゃないよ!」

『ばぁちゃん客脅すじゃん!』




そっくりだと思う。

名字と名字のおばあさん。

どこがって、ほら、性格が…。





『相変わらず字汚いな』

「うるさいよ、見せないよ」

『…………』

「……ごめんなさい」

『武に至っては綺麗すぎる。ほとんど使ってないだろこれ』

「いやーやっぱ授業中は眠くなんのな」




分かるけどさー、少しはがんばんなよって言いながら丸めたノートで山本の頭を軽く叩く名字。

言ってることはそれなりっぽいのに主旨は「あんた達がノートをとらないとあたしが勉強できないだろ」ってこと。



こいつのこんな性格にもだいぶ慣れたけど。





あれは中1になって初めての中間テストが間近に迫っていた時だった。今に比べたらまだ学校に来ていた名字にいきなり話しかけられたのは。



あの時はびっくりした。



久しぶりに学校に来た名字のことを当時の俺は不良だと思ってて(性格こんなだし、学校来ないし)、俺なんかしたっけ!?なんて思ってたんだ。



その時初めてノートを見せろって言われて正直見せられるようなノートなんてとってなかった俺は名字に正面きってダメツナって言われた覚えがある。



あの時は中学生になったばっりでテストも基礎だったからなんとかなったけど俺の苦労はそこから始まった。




次もよろしくと爽やかに黒い笑顔で話しかけてきた名字。



だいたい何故たくさんいる生徒の中で俺を選んだかっていうと山本が赤マルチェックつけてる奴だからって…、これ山本のせいなんじゃないかなもしかして!!




『いつもさんきゅー。はい、野菜』

「俺にもくれんのか?」

『ツナに赤マルチェックつけてた武のおかげで今のあたしはいるよ』




山本の肩を叩き、なんともまぁ嬉しそうな名字の笑顔は小憎たらしくて仕方がなかったとは口が裂けても言えないけど思うくらいなら構わないかな。








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