medium story

03



 




『あ、あのありがとうございましたスクアーロさん!』

「お、おぉ…」



漸くこの恥ずかしい状況に気付き腕の中からお礼の言葉を口にすると、スクアーロさんも咄嗟のことで理解していなかった自分達の近さに気付いてくれたらしい。逞しい腕の中から解放してくれた。




「先輩どさくさに紛れて何してんの?」

「てめぇのせいだろぉがぁ!!ふざけんなぁ!!」

『あ、獄寺さん!スクアーロさん達が任務のことでお話があるようです』

「俺にか?」

『はい。今そちらの会議室にお通ししようと思っていたところです』




騒ぐスクアーロとベルフェゴールに獄寺がキレる前に用件を述べるとこちらの話に耳を傾けてもらえた。

ここで獄寺まで喧嘩に入ってしまったら完全に止められなくなる。


昔は沸点の低かった獄寺もだいぶ丸くなった。その分たまにキレた時の威力は凄まじい物になったけど、獄寺を本気で怒らせるような人物はランボくらい。

右腕として守護者をまとめる獄寺の仕事量は他の誰よりも多く、いつも忙しそうにしている。真面目な獄寺はフォロー役に回ることが多く、自由気ままな守護者達にいつも頭を悩ませている。最近では怒鳴り散らすことより静かに頭を抱えていることのほうが多いかもしれない。





『スクアーロさんお飲物は?』

「あー、ブラック」

『ベルさんは牛乳ですよね。失礼します』






会議室に戻ればなんだか重苦しい雰囲気で、相変わらずベルさんは笑ってますけど。

真面目に話しているのもスクアーロと獄寺のみでそれぞれの横に飲み物を置いていく。



最後に二人から少し離れた所に座るベルフェゴールの前に牛乳を置くと「さんきゅ」と声がかかる。任務の話を聞いていても仕方ないので話に加わっていないベルフェゴールの傍らに立つ。





『牛乳好きですね』

「よく王子が牛乳好きだって分かったね」

『毎回牛乳飲んでたら分かりますよ』

「お前牛乳嫌いだろ?」

『え、なんで分かるんですか!?』



真面目な話をしている側で牛乳の話なんて不謹慎かな?邪魔にはならない音量での会話でもちらちらと向こうが気になってしまう。



不意に椅子から立ち上がったベルフェゴールが側までやってくるのを目て追うと、あまりにも至近距離までくるので見上げる形になってしまう。



『な、なんですか?』

「ししっ。ほらお前チビだし」

『なっ!ちょっと潰してますってば!』


近寄ってきたベルフェゴールは背比べのごとく頭の上に手を乗せ体重をかけてくる。ただでさえ155cmない身長が縮んだらどうしてくれるんだ。


どかしてくれない腕を掴み離してもらえるように必死に力を込めてみてもびくともしない。それどころか掛かる体重は重くなるばかりでだんだんと後ろに反ってしまう。おまけに髪をぐちゃぐちゃにされれば、もう諦めてされるがままの状態。





「おめぇら遊んでんなら余所行けよ!」

『ひぃっ!』

「しし、さっきから機嫌わりぃじゃんお前」

「おめぇらがうるせぇからだろーが!」

『すいません!1時間後またお伺いします!』

「ゔぉぉい…」






久々に怒鳴られたこともあって驚いた拍子に会議室から飛び出してきてしまった。カップならまた後で下げに来ればいい。どうかその時には誰もいないでいただきたい。






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