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01



 




『失礼します』

「あ、名前。この書類会議で使うからコピーよろしく」

『かしこまりました』

「慣れないなー相変わらず」





そう言って苦笑いを浮かべるわたしの上司は、両肘を机の上につき組んだ手の上に顎を乗せる。

まだわたし達が学生だった頃からは想像できないその仕草すら、今は様になってきつつある。優しいところ、友達想いなところはまったく変わらない。だからこそわたし達はこの人についていくと決めたんだ。





「最近どう?」

『どうってなにが?』



今はきっと友達モードであろうと判断し、敬語を取り払えば「普段からそれでいいのに」と笑われた。そうは言われても守護者でもなんでもないわたしが、いくら学生時代の友人だからといってもボスにタメ口はきけない。そんなことしたらあの忠犬が黙っちゃいないだろう。




「なにって決まってるじゃん」

『……?』

「最近、獄寺くんとはどうなの?」

『は!?え、な、あの…は!?』





丁度いいタイミングで頭の中心にいた人物の名前を言われたら誰だってこうなるはず。驚きでうまく言葉を発せなかったのがまずかったのか、笑いを堪えるのに必死といった様子のツナを睨めばごめんごめんと謝られた。




「獄寺くんにも敬語使ってんの?」

『仕事の話の時はね。ま、最近じゃ仕事以外の話なんてしないけど』

「あんなに仲良かったのに」

『よくないよ』





中学の時からよく4人でいたわたし達が、ツナと一緒にマフィアのいろいろに巻き込まれたのは仕方がなかったようなもので、あの時はリボーンこの野郎とか思ったりもしたけど今ではどれもいい思い出。

獄寺も山本も守護者になって目に見える形でツナの手助けができる。

一方戦うことのできないあたしはいつも守られる対象でそれがどうしようもなく嫌だった。今は裏方としてツナのサポートができるけど、これは誰にだってできること。



リボーンに鍛えてもらって自分の身を守ることくらいはできるようになった。それでも護身術程度で任務に出たりすることはまずないし、ヴァリアーなんて話すだけでも怖い。そんな人と中学生の時には既に戦ってたんだと思うと、やっぱり守護者のみんなは格が違うんだなと思わされる。




今でもみんなといれることはすごく嬉しいことだけど、あの時のように対等ではいられない。それを寂しく思うのはきっとお門違いだけれど、たまにはあの時のように気兼ねなく馬鹿騒ぎをしたいと思ってしまうのはいけないことですか?






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