medium story
姫
夢でも見ているんじゃないかと思った。
あぁ、でも初めてスクアーロに会ったときも絵本の中の王子様だと思ったし、初めて木の枝に座ってるスクアーロを見た時もピーターパンなのかと思ったんだっけ。
3月13日この日はスクアーロの誕生日で、毎年少し前になるとスクアーロを思い出した。わたしの初恋の人。伝えられなかった思いが消えることはなく、いつも胸の中に大事に閉まってあった。
悲しいことに婚約者の元へ旅立つのは3月13日。
神様はこんなときにもスクアーロを忘れさせてはくれないらしい。なんて意地悪なんだろう。
日付が変わる瞬間を思い出の窓際で過ごそうと、まだ肌寒い3月の空が見えるように窓を開け放った。
思い出すのはスクアーロのことばかり。
嫁いでしまえばここにくることもほとんどないだろう。スクアーロと過ごしたこの場所ともお別れだと思うと、我慢していた涙が浮かび上がってくる。
だめだったよスクアーロ。
わたしやっぱり泣き虫のままみたい。
自由になろうともがいてみたけど非力なわたしじゃ鳥籠を揺することすらできなかった。
堪えきれなかった涙が頬を伝った時、魔法の解けたシンデレラは魔女から最後のプレゼントをもらった。
(12時の魔法が解けた時)
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