medium story
お
窓から広がる青空は今日もどこまでも晴れ渡っていて、一体どこまで続いているのだろうと手を伸ばす。
触れもしない青空を飛べるのは、勇気を出して枝から飛び立った鳥にのみ与えられる自由。
もしかしたら鍵なんてかかっていなかったのかもしれない鳥籠。
少しくちばしでつつけば開いたかもしれない鳥籠。
自由になりたいと青空を見上げながらも何もしようとはしなかった。その罰が来たのかもしれない。
政略結婚
こうゆう世界にはよくある話で自分も例外ではなかったはずなのに考えもしていなかった。
まさか自分にあるはずがないと考えていた結果がこれだ。せっかく鳥籠から出られると思ったのに、それはただの鳥籠から鳥籠へのお引っ越し。
やはり人の手を借りるのでは鳥籠からは抜け出せないのだと今更ながらに理解した。どんなに勉強して知識をたくさんつけたところで、今一番必要なのは鳥籠からの抜け出し方。そんなのは学校では教えてもらえない。自分で探すしか道は残されていなかった。
婚約者に冷たい態度で接してみても照れ隠しだ、直に慣れると相手にされなかった。
鳥籠を壊そうと暴れてみてもマリッジブルーだと微笑まれた。
自分はこんなにも無力なんだと実感させられた。
あまり泣くなと言われたあの日から泣くことはやめたはずなのに。歯を食いしばる力を少しでも緩めたら目から涙がこぼれそう。
『スクアーロォ…』
12年振りに泣いた。
(懐かしい名前を呟きながら)
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