medium story



 




初めて出会ったあの日からいったい何年過ぎたのでしょうか。

































気付けばわたしも26歳。もう少女とは呼べない歳になった。



彼は従うべき主を見つけ自ら羽ばたいていきました。

止まり木だったあの木に最後に来たのはもう10年以上も前のことになります。








雨が続く梅雨の時期でした。

一ヶ月ほど姿が見えなかった彼はなんの前触れもなく姿を現しました。嬉しさのあまり部屋に雨が入ることなど気にせず窓を開け放ちました。

この一ヶ月で話したいことがたくさんできたのにそんなのは彼の左手に視線がいった時にすべて弾き飛びました。



『手!どうしたの!?』

「あぁ、心配いらねぇ。自分でしたことだぁ」

『自分、で?』

「明日、剣帝とやってくる。勝てば晴れてヴァリアーの仲間入りだぁ」

『ヴァリアー…』




独立暗殺部隊ヴァリアー


エリート集団の集まりであるそこは強さを求める彼には絶好の場所。そして泣き虫なわたしには遠すぎて手を伸ばしても触れもしない場所。




「負けたら死ぬ。勝っても暗殺者だ。もうここへは来れねぇ」

『そっか。死なないでね』

「おまえも、泣いてばっかいんじゃねぇぞぉ」







最後に見た彼の顔は呆れたような苦笑いでした。


顔に当たる雨で涙はバレないはずなのに、歪んだ顔までは隠しきれなかったみたいです。最後もやっぱり泣き顔で、旅立つ彼をただ見送ることしかできませんでした。



(すべてを洗い流す雨)





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