medium story



 




彼は強さを追い求めるさすらいの剣士でした。

わたしは大切に育てられた鳥籠の中の鳥でした。





























彼がマフィア養成学校に入学したのと同じ年。わたしは名門と言われる女学校に入学しました。お父様もマフィアですがわたしにはお兄様がいます。女であるわたしは知性を身に付け、より魅力的な女性になるようにとたくさんの知識を詰め込みました。



一方でマフィア養成学校に入学した彼の評判は瞬く間に広がりました。地方を巡り凄腕の剣士を倒すようになってからは至る所に傷を作って帰ってくるようになりました。

わたしはそんな彼の帰りを救急箱片手に待つことしかできませんでした。争い事はあまり好きではなかったし、いつか彼が大怪我をして帰ってくることがあるかもしれない。大怪我で済めばまだいい方で二度と帰ってこないかもしれないと思うと気が気ではいられなかったけど、今日の相手のここがよかった、来週はナポリまで行ってくる、と楽しそうに語る彼を見るのが好きだったわたしは彼を止めることなんてできるはずもありませんでした。



(鮫は止まれない)





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