medium story
連
この季節になると必ず思い出す男の子がいます。
所謂幼なじみの彼はとても優しくて強い男の子でした。
泣き虫で気の弱いわたしは男の子たちにいじめられてもやり返すことができなくて、ただ泣くばかり。そんな反応がいじめっこたちには面白かったのか、しょっちゅうからかわれては泣いていたあたしの前にいきなり現れたのがその男の子でした。
五人もいたいじめっこをたった一人でやっつけてしまった男の子はさながら白馬に乗った王子様。
そんなおとぎ話のような出会いも一瞬で打ち砕かれることになったのは今では笑い話。
「ゔぉぉい!!何でやりかえさねぇんだぁ!」
『え?』
「え?じゃねぇ!やられたら10倍でやり返せって親父に習わなかったのかぁ?」
『え、えぇ?』
わたしの白馬に乗った王子様は少々気性が荒いようで、いじめられていたわたしを助けただけでは気が済まないようでした。流れていた涙も驚きで引っ込んだものです。
(鮫に乗った王子様)
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