medium story

確かにカップル



 





「おい、名前。今日本屋寄ってくぞ」

『え、行ってらっしゃい』

「馬鹿やろー、おまえもくんだよ」







俺達は確かに半ば勢いで気持ちを伝え合い、お互い同じ気持ちなのを確認した。


そんで付き合ってる。


…はずなんだが自信がねぇ。





ちゃんと付き合ってくれと言ったわけじゃないが、あの流れ的にどう考えても付き合ってるだろ。



そもそもこんなことを思うのは、この馬鹿女の態度が何1つ変わらないからだ!


呼び方だって「獄寺」のままだしよ。べ、別に下の名前で読んで欲しいわけじゃねーぞ!


一緒に帰るのも昔からしていたことで、十代目をご自宅まで送り届けたあとにこうして寄り道するのも、特別新鮮なわけじゃない。



だからって俺たち付き合ってんのかなんて聞けるわけがない。一体どうしたらいいっつーんだよ!











「そりゃーアレだろ。恋人らしいことしてみたらいんじゃねーのか?」

「恋人らしいことだぁ?」

「そ!例えば一緒に帰るだろ?」

「おう」

「そんで家に呼んでみてよ!」

「ほうほう」

「そのまま押した「わあー!!山本!山本それ以上はダメだってば!!」ちぇっ」





野球馬鹿に相談した俺が馬鹿だった。こいつはムカつくが昔からモテるから、なんかいいアドバイスの1つや2つ期待してたが、間違いだった。やっぱなんでこいつがモテるのか分かんねえ。





「でもそこまでいかなくても、手とか繋いでみたらやっぱ恋人っぽくみえるんじゃない?」

「手…ですか?」

「そうそう。普通友達とは手なんか繋がないし、繋げたらやっぱり名前にも付き合ってるって意識があるんじゃないかな!」




な、なんと素晴らしい意見!俺のために…十代目っ!!獄寺隼人感激です!



「ですが十代目。俺、女と手なんか繋いだことないっす」

「え!お、俺もないや」



だいたい女の扱いには慣れてねーんだ。手なんか繋げるか!







十代目をご自宅までお送りして、今日も名前と帰る。さっきの話が頭ん中グルグルしてて、何話してんだかさっぱり分かんねえ。情けねぇぜ。



隣の馬鹿女は俺の気も知らねーで、鼻歌なんか歌いやがって。なんでそんなルンルンなんだよ。



さっきまで話していたからか、こいつの手ばっかに目がいっちまう。最近一段と冷え込むようになってきた。ブレザーの下にはカーディガンが欠かせなくなってきたし、名前はしっかりマフラーまでしてやがる。



それにしてもこいつカーディガンでかくねぇか?手の半分まで隠れてる。小さい手で袖口を握るようにしているのは、なんだかかわいいなとか思ったけど、そんなんじゃ手繋げないだろ。だいたいそんな握りしめたら伸びんだろーが。


そういえば手袋はしてねーな。寒いから手隠してんのか。



ったく、しょうがねぇ奴。





「おらよ」



何も言わずに手だけを差し出せば、こちらを見つめてぽかんとした後意味を理解したのか、顔を緩ませて手を握ってきた。


そのままズボンの中に入れれば、距離もぐっと縮まって。



寒さの中も寄り添えば左側から徐々に体中が暖かくなるような気がした。






『へへへ〜獄寺あったかい』

(…可愛いなおい!)





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