medium story

勇気を出してみよう



 





待っているだけでは何も変わらない。

自分が話したいんだから自分から行かなければいけないとゆう結論に至ったあたしは、部活が終わった後野球部が練習している校庭まで行ってみた。



野球部も練習は終わったみたいで、みんなで道具を片付けているみたいだ。山本くんはいるかな?もしかしたらもう帰ってしまったかもしれない。

いや、帰っていなくてもまだ残って自主練するかもしれないのに、いきなり押し掛けたら迷惑なんじゃないだろうか。



部活中は前向きな考えだったあたしの脳味噌は、時間が経つにつれて後ろ向きになっていく。




どうしたらいいのかも分からずに、校庭の入り口で立ち止まって何分過ぎたのだろう。



1人の野球部員がこちらにやって来たのが分かった。





「名字!?」



もう夕方で辺りは暗くなり初めてるのに、隅っこのあたしに気が付いてくれたのかな。心がほんわかする。勇気を出して会いにきてよかったな。



会いにきたはいいものの、この先はノープラン。いざ山本くんを目の前にしたら、何がしたくて会いにきたのか分からなくなってしまった。

ただ会いたかっただけだった。
ただお話がしたいなと思っただけだった。


特別な理由なんかないのに会いに来て、迷惑な奴だと思われたらどうしよう。



黙ったままのあたしに山本くんも不思議そうな顔をしている。何か、何か言わなくちゃと焦って口をパクパクさせてる様は、鯉みたいなんだろうな。恥ずかしいな。





「あのさ、そのー…えっと」

頬を書きながら口ごもる山本くん。

『ご、ごめんね!あの、えっと…』



あぁ、なんて言えばいいんだろう。会いにきました?お話したいです?どれもなんか変。





「もしかしてさ!俺に、会いに来てくれたり…とか?」



勘違いだったらごめんなーと、苦笑いをする彼。山本くんはなんであたしの言いたいことが、分かるのかな?いつも言いたくても言えないことを、代わりに言葉にしてくれる。



『あの、ね。昨日会いにきて、くれたって、聞いて。それで…』

「そうかそうか!あ、名字今日はもう帰るだけか?」

『うん。今日は、もう。』





これだけは、自分の口から言いたくて一緒に帰りませんか?と口にした。山本くんは少しびっくりして、目を開いた後大好きなあの笑顔で笑ってくれた。









(武!あの子誰だよ)
(彼女か!?ヒューヒュー)
(…今それどころじゃねんだ!!)



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